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︎︎彼の片手にイチョウのロゴが入った紙袋。こういう時は紳士的なのだ。普段とのギャップがなんたらとは言うが、普段人のこめかみに風穴作る人なのでどう思うかは個人に任せます。
「こんなんでいいのか」
︎︎彼は少し納得いかないようだ。
︎︎購入品は普段使い出来る服を2点と、ロゴマークが一方の縁に模様のように規則正しくデザインされており、繊細に凝って作られた銀のハングルのブレスレットだ。
︎︎ブレスレットはとても気に入ったので早速付けている。会計時に付けて帰ると店員に伝えた私にジンが満足そうな顔をしていたのはなんとなく気恥ずかしかった。
『もう充分すぎるわよ、ありがとう』
︎︎店内でも2度ほど同じ言葉を聞かされていたため、可笑しくってころころ笑う。ジンはならいい、と一言言って、続けた。
「借りは倍にして返せたってことだな」
︎︎その言葉に頭を傾げた。ジンは少し目を見開く素振りをして「アイスの件忘れてたのか」と。分かってて驚いた顔をしているんだろう、私が忘れるわけがないことを。
︎︎ただバイト先に迎えに来てプレゼントしてくれたのがそのためだったとは。思わず吹き出し、笑った。
︎︎そんな私を見る彼のいつもと変わらない済ました顔に得意げな表情があった。
︎︎車へ戻る道中、3段に重なるプレートに乗せられた1口サイズの何種類ものスイーツがショーウィンドウに飾られていた。思わず歩みを遅めて凝視する。
︎︎マカロンにショートケーキ、チョコムースにシュークリーム…。デコレーションもオシャレで美味しそう。
『ね、ねぇ…』
︎︎隣へ目を向ければ、私の極端に遅くなった速度に気づき、合わせてくれていたジンがいた。てっきり私を置いて行ったと思っていたが、むしろ私の心を見透かしているかのようにふ、っと笑った。
「可愛らしく強請れるようになったな」
︎︎素直じゃないために理由付けして頼みごとをするのが通常だったからか、素直なときはこんな風に褒められる。そう言うジンはどことなく満足そうだし、私も調子が狂うため、いつも『私はいつも可愛いですけどー』などと返すが、今日は辞めた。アイスの借りだろうがなんだろうが、ただの後輩みたいな存在の私に良くしてくれているのだ。
︎︎私は目を細め、自然と弧を描く口のままジンに伝えた。
『ありがとう』
︎︎ジンは少し目を見開き、少し笑うとあぁ、とだけ返す。そして私たちは中へ入った。
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作者名：ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時：2024年2月9日 16時
