一枚上手なあなたと満更でもない私【名探偵コナン】 (ページ13)

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︎︎私の笑顔を暫く見つめると、満足したようにふっ、と息を吐き出す笑い方を1度する。身近な誰かのような笑い方だと感じた瞬間、はっとした。
︎︎私が目を開いたのに気付いたか否か、彼はコーヒーに添えた私の手ごとカップを優しく包みながら、私の耳元に口を寄せて言った。

「洞察力が足らないな」

︎︎聞き慣れた低音が耳に心地よく響く。絶対にいないであろう場所にその人がいるという嬉しいような錯覚で頬が紅潮しそうになった。
︎︎私は距離を置こうと後ろに仰け反る。
︎︎そんな私に笑みを浮かべると、彼…ジンの声で言った。

「お前の好きな男は目の前だろ？」
『ち、違います…』

︎︎いつものように叫びたい気持ちを抑える。今は店員だ。敬語で小さく否定できた自分が偉い。全力で否定できないこの状況を知った上で揶揄ってくるなんて愉快犯すぎる。
︎︎私は歪み切った性格の彼に恨みの篭った目を向けた。

︎︎ジンはいつも余裕そうに揶揄う。わざわざ元彼に変装をしてバ先に顔を出しに来るくらい揶揄うのが生き甲斐らしい。…そこまで考えると笑いが込み上げてきた。

『仕事の合間に揶揄うためだけに来るなんて、…ふふ、それあなたの話なんじゃない？』

︎︎肩を震わせ笑い声を漏らす。ジンはそんな私に目を細めると、私の手ごとカップを自身の口元に近付ける。そのため私の身体もジンの方へ近づき、え、と声を出したときにはそのカップに口をつけていた。
︎︎カップ分の距離までお互いが近付いた。ジンはカップから唇を離し、色気たっぷりに唇を舐める。そして私は細められた深緑の瞳に捉えられた。

「どうだろうな」

︎︎どことなく真剣な声色で囁くように返される。

︎︎こいつは私の反応を楽しんでいるだけなのに、色仕掛け専門であるこの私が不覚にもときめかされたなんて悔し過ぎる。そんな私をお構い無しに「終わったら車に乗れ。用件は以上だ」と言うと踵を返して出ていった。それを言うためだけならメールでええやん、と唖然。

「お疲れ様、交代よ」

︎︎裏から出てきた社員さんが2人の時間を作ったぞ、と達成感に溢れた表情で私に言った。
︎︎その顔と彼にシフト終了時刻を知られていたことになんとも言えない気持ちになった。

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ほのぼのな中でも組織の怖さを含みたいので、今回は変装されていたのと行動を把握されているのも書きました。緊張感も大切にしたい。