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5月1日の火曜、堂本記念公演コンサート当日だった。ドレッサーの前に座らされた私は、あれやこれやと色んな所を弄られている。Aちゃんもう目を開けても良いぜ、との快斗君の言葉に恐る恐る瞼を上げれば−−−−驚きから息を呑んだ。
『........え、快斗君。これって』
「おう。どうせやるなら本格的、が俺のモットーってな!」
鏡の中には見知らぬ女の子がいた。どこか蘭先輩を彷彿させながらも、やや幼げな印象を受ける彼女。彼曰く、幼馴染の青子先輩をイメージしたらしい。
『........よく見ると、快斗君も少し違う?』
「あー....俺は少しだけな。」
顔だちはあまり変わっていないようだけれど、その髪型や服装は育ちの良さを前面に表した姿だ。どこかで見たような姿だけれど、一体どこで見たのだろう。うーん、と唸っていれば、快斗君は慌てたように時計を指し示した。そろそろ出ないと遅れちまう、と。
『....................あ。』
「.....................げ。」
急ぎ足の最中、ホテルのロビーで秀一さんを見かけた。私達が思わず足を止めて注視していると、彼もその視線に気づいたのだろう、目があった。それから顔をじろじろと見られたような気がしたのだけれど、彼は何も言うことなく私達の脇を通り過ぎてしまった。
『.....すごいね。あの秀一さんも、全然気づかなかったみたい。』
「一瞬焦ったけどな。でも、流石は快斗君だろ?」
私達はお互いを見つめあうと、クスクスと笑い合う。悪戯が成功した子供の気分だ。ちょっとした緊張と高揚感に、私はワクワクしていた。
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