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「−−−また、考え事ですか?」
『文和さん..........そういえば、会場にいませんでしたね。』
彼は苦笑した。サングラスなしでは、あの会場は少々眩しいですからと言う。
「貴女が周りに気を遣って飲み物や食事を摂ろうとしないので、鈴木のお嬢さんがこの部屋を手配してくれたんです。ここで休憩を取りなさいってことなんじゃないですか?」
彼の言葉に成る程と頷く。どうりでこの部屋のテーブルには所狭しと食事や飲み物が置かれているわけだ。けれど、園子先輩。私達、こんなに食べられないです。
「−−−それと、少し耳に入れてもらいたいことが.....」
真剣な面持ちの文和さんの様子に、二つのグラスにオレンジジュースを注ぐ手を止めた。
「.......事務所に脅迫状が。それも貴女宛です。」
『脅迫状?』
思わず眉間に力を込めた。コクリと彼は静かに頷く。
「−−−堂本記念公演に出席すれば、お前は地獄を見るだろう、と。」
『悪戯?』
「悪戯だとしてもタチが悪すぎます。」
既に警察には届け出ました、と彼は言った。流石、仕事が速い。
「今回は聴講を辞めましょう。リハーサルは見学できたんですよね?なら充分でしょう。」
『え……でもっ』
煮え切らない私の様子に、文和さんは大きな溜息をついた。
「−−−ただでさえ、貴女は色んなことに巻き込まれているんです。バイオリニスト生命…挙句、命まで失っても本当に良いんですか?」
文和さんの言い分も最もだ。今回はダメでもまた次回があるだろう、そう渋々ながらも私は彼の提案を受け入れた。
「−−−それと、もう一つ。」
『…また悪い報せですか?』
文和さんは苦笑した。
「−−−演奏依頼です。会場は森谷帝二氏の自宅で、彼主催のガーデニングパーティーになるようです。」
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