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鈴木財閥のイブニングパーティーは、思った以上に豪華だった。啓太さんに付き添ってもらいながら鈴木会長やその奥様、次郎吉様と挨拶を交わす。程なくして始まったパーティーでは、特別ゲストとして紹介され、エルガーの愛の挨拶をはじめ他数曲を啓太さんと一緒に弾ききれば、鳴り止まない拍手に安堵した。
「−−−A!」
財界人の方々と無難な挨拶を交わしていれば、群青のマーメイドドレスを着用した園子先輩と目が合う。彼女に手招かれて傍に寄れば、会場とは別の控えの間に連れ込まれた。そこにはすでにマネージャーである文和さんが控えている。
『.........もしかして元太君の状態が悪かったんですか?』
あー、違う違う!と園子先輩が笑った。
「ガキンチョは元気元気。声は出しづらいみたいだけど、数日すれば治るって。」
良かった、と胸を撫で下ろした。
「それより−−−襲われたのよ!」
鬼気迫る園子先輩の様子に首を傾げる。彼女達は元太君の診察が終わって帰ろうとした時に、一方通行を逆走してきたトラックに轢かれそうになったとのことだった。それも彼女達が道路脇に避けても追いかけてくる辺り故意的なものだったらしい。幸い、誰も怪我はなかったようだけれど、追いかけた先に停まっていたその問題のトラックは、既にもぬけの殻で.......犯人を捕まえることができなかったと悔しそうに園子先輩は拳を握った。
「−−−し、か、も!」
彼女は秋庭怜子さんの愚痴を言い始めた。彼女はどうやら、貴方達と一緒にいたら面倒なことに巻き込まれかねないと言って一人だけタクシーに乗って帰ってしまったらしい。なんて自己中な人かしら!と園子先輩は憤慨していた。
『........少しは落ち着きました?』
「ええ。スッキリしたわ。」
その後はある程度感情を爆発させて落ち着いたのだろう。怒鳴ったら喉が渇いちゃったから何か飲んでくるわね、とケロッとした様子で彼女は控えの間を出て行ってしまった。
彼女の出て行った扉を見つめながら、首を傾げる。
元太君が飲んでしまったとはいえ、あれはおそらく秋庭さんを狙ったものだろう。トラックの件はその場にいなかったので分からないが、それだってもし秋庭さんを狙った犯行だとしたら。彼女が一人別行動をとることで、他の人を危険から遠ざけようとしていたのではないだろうか。
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