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「ーーーおいおい。人助けも良いが、自分が死んじまったら元も子もないだろ。」
腕を引かれる感触と、突然止んだ落下に恐る恐る目を見開けば、目の前にはモノクルをつけた怪盗キッドがいた。
『ーーーっ!?』
「.............ハイハイ。大丈夫ですから大人しくしていて下さいね、お転婆なお嬢さん。」
キッドに抱かれ、支えられている身体を認めれば、助かった安堵感に力が抜けていく。片隅に光る黄金にあてられたのか頭がぼんやりとして、酷く瞼が重い。気を失えって意味じゃねぇよとキッドの焦る声を感じながらも、未だに頭に燻る靄に導かれるように意識が遮断された。
「ーーー眠り姫がようやくお目覚めか?」
次に私が目覚めたのは、秀一さんのベッドの上だった。怠い身体を感じながら、頭を撫でてくれるエメラルドの瞳の彼に意識を向ければゆっくりと言葉が紡がれていく。
「近くの公園のベンチで眠っていたところを、君の知り合いだという青年が見つけてくれたらしい。」
『ーーー青、年?』
「黒羽快斗と名乗っていたが」
『.......あぁ、快斗君か。』
怪盗キッドが恐らく公園まで運んでくれたのだろう。それを偶然通りかかった快斗君がホテルまで連れてきてくれたということか。しかし、それでどうして私は彼の部屋にいるのだろう?と秀一さんに疑問を向ければ、彼は察したらしい。偶々ホテルのフロントで遭遇したため、秀一さんが後を引き継いだということだった。
「ーーーそれで」
君の上着に挟まっていたこれを含めて、何があったのか説明を聞きたいところなのだが、と言って渡された白いカード。そこには、ハンカチは有難く頂戴しましたという一文と怪盗キッドという署名だけが書かれた至ってシンプルなものだった。
『ーーーちゃっかりな人。泥棒さんってそういうものなの?』
「.............さぁな。」
私は傍にいてくれる秀一さんの左手を掴むと甘えるように自身の頬に擦り寄せる。彼の程よく温かいその体温が、私に生を実感させてくれた。
『ーーー秀一さぁぁん.....いろいろ怖かったよー』
「ーーーどうやら君には休息が必要のようだ。」
彼の声色がいつも以上に気遣わし気だった。
『ーーー少しだけ、疲れちゃった。
でも夕方から用事あるからそれまでには回復しないと..........。』
体力不足かなと呟けば、秀一はくつくつと笑う。トレーニングなら付き合うぞと言う彼に、私は苦笑することしかできなかった。
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