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「−−−−Aさん?どうしたの?何か思い出した?」
急に言葉を途切れさせて考え込んだ私を不審に思ったらしい。矢継ぎ早に尋ねてくるコナン君をゆっくりと見下ろした。
『どうしよう、コナン君。』
「どうしたの?」
『ーーー気持ち悪い、』
「え……もしかして具合悪かったの?吐きそう?」
背中をさすろうとしてくれる彼の手をやんわりと止めて首を振った。違うの。気持ちが悪いのは体調というよりーーー。
『ーー頭の中がね、ぐるぐるする。』
「頭の中?」
目眩がするとかじゃなく?そう尋ねる彼に首を横に振った。身体は至って元気だ。
『思考が、ね。止まらないの。全てが疑わしく思ってしまう。でも、そうは思いたくなくて、一つ一つ消していくんだけど、うまく、消えてくれなくて。』
私は、子供相手に何を言ってるんだろう。そう頭の隅で思った。しゃがみこみ、動けなくなってしまった身体を叱咤しようとしても、思考が邪魔をする。
「Aさんーーー」
私の右手が、一回り小さい両手に包まれた。すごく、あたたかい。違う、私の手そのものが、思いの外冷えていたのだろうか。
「僕の目を見れる?」
彼の言葉の通りに、コナン君の両眼を覗き込む。曇りのない、綺麗な瞳だ。
「そう。それじゃあ、そのままゆっくり空気をはいてーーー。焦らなくて大丈夫。ゆっくりね。」
コナン君の言葉には魔法が宿っているのだろうか。彼の言葉につられるように呼吸をすれば、自然と気持ちが楽になった。
「−−−−落ち着いた?」
『うん、ごめんね。私、もしかして』
「過換気症候群ーーー俗に言う、過呼吸になりかかっていたかな。」
『…….。』
「Aさん?」
流れ出た汗を拭った。
『やー、恥ずかしい。本当ごめんね。まさか、自分がなるとは思わなかったから。今まで、何があっても起こしたことなんて、一度もなくて。』
迷惑かけたね。そうコナン君に言えば、彼は首を横に振った。
「僕の方こそ、色々聞いちゃってごめんなさい。多分、Aさんの中でも消化しきれてない気持ちがあってーーーそれを僕が刺激しちゃったみたい。」
彼の言葉を、頭の中で流していく。その言葉が、例え小学生らしからないものだったとしても、今のままならない状態の私にはどうでも良かった。
「でもね、Aさん。」
緩慢な動作で彼を見上げる。
「Aさんの思考のプロセスは間違ってないと思うよ。」
コナン君の言いたいことが分からずに首を傾ける。
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