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一度溜息をつくと、彼に話して聞かせた。セミナー後、教室に残った私達は講師であった河辺さんと談笑していたこと。その後、彼女とトリオを組みたがっていた連城さんと水口さんが河辺さんを呼びに来たことを。


『ーーー河辺さんはあまり気が進まなかったみたいだけどね。』

「気が進まない?どうして?」


『.......音楽性が違うって言ってた。彼等に他の人を勧めていたくらい。』


「でも、結局、河辺さんはその二人のお兄さんと一緒にいたんだよね。」

『.......連城さんと水口さんが彼女に結構食い下がっていたからね。俺たちの曲を一度だけで良いから聴いて欲しい、それからトリオをやるか決めーーー』


そこで思い出した。譜和さんの名前をどこかで聞いたような気がしたのだけれど、確か、彼らが話していた先生の苗字と同じだったのだ。譜和先生が、河辺さんを誘えって言ってたからって。河辺さんも、譜和先生が言うならって。


もしも、あの爆発事故が偶発的なものではなく故意的なものだったとするなら?もしも、無差別ではなく、目的があった上でのことだとしたら?それを、仕向けることができたのは、誰だろう。


あのピアノを長年調律していたのは彼だ。もしも、アカデミーに寄贈された当初から調律が狂っていたとすれば、そのピアノに慣れてしまっていた彼等は、多少の細工をされていたとしても、いつものことだとして.......気づけないこともある?


でも、だとしたら動機は何だろう。譜和さんは、連城さん達の生活態度を非難していたけれど、河辺さんのことは評価していた。少なくとも彼女を憎んでいる様子はみられなかった。それに、だ。自身と堂本さんの長年の相棒だった楽器を−−−−深い愛着があるだろうピアノを粗末にできるとは、とても思えないし、思いたくない。


すぐさま、これまでの有り得ない考えを打ち消し否定にかかる。連城さん達だってプロだ。私達よりベテランだ。特に河辺さんなら、譜和さん達が言っていたように異変に気付けるはず。そもそも、火の気がないところだったからってだけで事件性を視野に入れているわけで、むしろ事故の可能性の方が大きいだろう。
それに譜和さんだけが怪しいわけじゃない。そうなると一人だけ即死を免れた河辺さんだって、疑わしくなってしまう。そして、うちの高校でもそうなのだけれど、通常、練習室は予約制だ。予約板は誰にでも見ることができただろうし、それを見ることができた人全てが、所謂、容疑者になってしまう。

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設定タグ:赤井秀一 , 安室透 , 降谷零   
作品ジャンル:ミステリー
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作者名:ナツメ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年12月9日 22時

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