アメイジング・グレース ページ35
あれから三日後、ハンドベルやバイオリンを携えて阿笠さんのご自宅を訪ねれば、この間の子達に加えて茶髪の女の子いた。名を灰原哀ちゃんと言うらしい。二日前から阿笠さんが面倒を見ているということだった。
『哀ちゃんもハンドベルやってみる?』
「.......遠慮しておくわ。興味がないの。」
『.......そ、そう?もしやりたくなったら言ってね。』
「......ええ。」
クールすぎる。彼女と上手くコミュニケーションがとれない。小学一年生といえばつい最近まで幼稚園児だったはずだ。けれど、私よりも大人びて見えるのは一体どうしてだろう。やはり最近の小学生は怖い。
「ーーーお姉さん、大丈夫?」
気遣うように見上げてきたコナン君に何とか笑みを浮かべると、彼にはうちにあった分数バイオリンを渡した。加えて、ソのベルを元太君、シのベルを歩美ちゃん、レとオクターブ上のレの二つのベルを光彦君に手渡す。
ハンドベルの子達に、入るタイミングや鳴らし方などを簡単に説明をすれば三人ともすぐにマスターしてくれた。
さて、次はコナン君だ。
『ーーーとりあえず、コナン君。いつも弾いてるような感じで一度通して貰える?』
「はーい。」
彼はバイオリンを構えた後に一度深呼吸をし、そのまま両眼を閉じた。
『ーーーっ?』
眼を閉じたままアメイジング-グレースを弾く彼は、とてもじゃないけれど小学一年生のレベルではないように感じられた。恐らく、先天的に耳が良い方なのかもしれない。
所々ピチカートが固いのは癖なのか.....その部分は少し引っかかったものの全体的にとても良い演奏だった。
「.......どうかな?」
『うん。凄く上手でびっくりした。お世辞抜きで多分一年生の時の私より上手だと思う。』
「........う、わーい!」
一瞬戸惑いを見せたコナン君だったけれど、すぐさま諸手を上げて喜びの声をあげた。
「コナン君すごーい!」
「Aさんより上手だなんて、将来バイオリニストになれるんじゃないですか?」
「オメー、歳ごまかしてるんじゃねぇの?」
元太君の言葉にコナン君が空笑いを零しているのを横目に楽譜を眺める。
『ね、コナン君、そのバイオリンの弾き方ってもしかしてホームズの真似をしていたりする?無意識、なのかもしれないけど。』
「ーーーーえ?」
練習記号C Dの小節を彼に指し示す。
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