姉御の来襲 ページ30
――――…
あれから数日が経って、僕たち万事屋は皆で昼食を食べている。もちろん、昼食っていうのはいつも通りの卵かけご飯だけなんだけどね。それくらい万事屋の家計は火の車だった。
『…ンー…』
〈新八、新八。Aが食べれなくて可哀相ネ。〉
隣で食べていた神楽ちゃんに耳打ちされて、向かい側のソファーに座っている彼女を見る。確かにAちゃんはなんとか箸を使って一人で食べようとしているが、やはり扱いが慣れていないのか、うまく口に運べていない。ユルユルな卵かけご飯をグウの手で掴んでいる箸で掬った傍らからご飯を落としそれを先程から繰り返していた。
『……フ……ゥ…』
だんだんと機嫌が悪くなっていく彼女の隣では、一人もくもくと銀さんはご飯を食べている。
銀さんも、あんな様子のAちゃんの隣でよくご飯食べられるなー…。
「あの、銀さん。Aちゃんが箸使えなくてご飯食べれないみたいですよ?」
「――アー?」
銀さんは箸を止めながら、隣のAちゃんを見る。もはや彼女の瞳からは微かに涙が溢れていた。お腹がすく中、目の前のご飯を食べられないもどかしさは相当なものだろう。
「…何。オマエ箸使えないの?」
「いや、二才で使えたらたいしたもんですって。」
「この間は私が食べさせてあげたアル。」
Aちゃんは一旦手を止めて、大きな涙目の顔で僕達の方を見渡したあと、銀さんにむけて自分の箸と茶わんをかかげて首を少し傾けた。きっと“食べさせて”という意志表示だろう。Aちゃんの茶色の細い猫毛が微かに揺れる。彼女の行動に銀さんは目を丸くしていたみたいだけど、すぐに何事もなかったように表情を元に戻すとわざとらしく大きなため息をはいた。
「ったく最近の親は何やってんのかねぇ、こうやってガキの頃から甘やかしているから、いざいい大人になった時にやれ“ニート”だの、それ“アダルトチルドレン”だのなんだの言われんだよ。ったく少しは自分でやってみるっツー向上心がなけりゃーいつまでたっても成長しねェーっての。だいたいなァ、今が可愛い時期ってなもんで男親なんかシュークリームのクリーム並に娘に甘ェが、そいつがいざ思春期むかえてみろ。今まで手塩にかけて可愛がってきたものが手の平返すように煙たがわれるんだぜ。それに加えて定年まじかの会社リストラされ、嫁と娘に出ていかれた矢助五十五才の気持ちがおめェらに分かるのか!?」
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