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パーン
空を切る音がした途端、彼女の左胸に焼けるような痛みが走り、ズザザとぬかるんだ地面に倒れる。顔や腕や脚全てが泥まみれになってしまった。だけど、そんなことも気にならないくらい、胸の痛みは激しく、女性の頭の中では"絶望"という二文字がギラギラと浮かんでいた。
彼女が地面に顔を伏せていると、先程よりもかなり近い距離に追手がいるようで、たくさんの足音がより大きく聞こえていた。
……GAMEOVER。
もう逃げられない。女性はそう悟った。ここでもし生きのびたとしてもあの地獄で一生を過ごし、そこで研究材料として扱われ続け、そして最期を迎えるのだろう。容易に想像できる自分の未来が滑稽だった。彼女は、人知れず自嘲の笑みを零す。それなら、このまま死んだ方がましだ。
悔しい…。女性は唇を僅かに噛み締めると、そっと瞳を閉じた。
「−−−お主、その傷は!!」
袈裟を身に付けている長髪の男に話しかけられ、彼女は微笑む。痛みが酷いのか、彼女は朦朧とした中でその長髪の男の衣類を握った。ビリビリと辺り一面に電流が走り始める。長髪の男は僅かに眉を寄せた。
「ーーー私には追っ手がいるの。お願い。あの子を、Aを助けて。私と、白夜叉って人との子......。」
「何?銀時の?それは真か!?」
高まる電流の中、その男に抱えられながら女性は子供を隠した建物を教える。それから、ポツリポツリと組織の研究内容を彼に伝えた。
「ーーあの子をお願い。私を少しの間だけでも母親にさせてくれたあの子を守って。」
彼女はそう言って、静かに瞳を閉じた。
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