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恭弥に言われて、成る程と改めて思った。だけどね、元々僕が通っていた氷帝学園。ちょっと普通じゃなかったんだ。兄である芥川慈郎を始めとして、跡部や忍足など性格はアレでも顔だけは無駄に良い男子テニス部と長年付き合ってきた僕としては、これくらいで可愛らしく頬染めてたらやってらんないってもんだ。兄貴たちに過保護に守られていたからこそ、そこいらの男子は近づいてこれなかったけれど、身近すぎる兄貴たちのおかげで、無駄に異性への免疫はバッチリだった。
「…もういいよ。僕は寝るから起こさないでね。」
『あ！ズルイ。恭弥、待って。僕も一緒に寝る。』
靴を脱ぎ、恭弥の隣を陣取って布団を被ると必然的に彼と密着した。幼い頃にやった、お泊まり会のようで、どこかワクワクする。
「………もしかしてと思うんだけど、君、ここで寝るの？」
『当然！じゃ…おやすみー』
僕はすぐに夢の世界へと旅立った。
――――――――…
「…これじゃあゲームにならないんだけど。」
雲雀はAを見ながらため息をついた。
「そもそも、こんなに身体を密着させておいてどういうつもり？」
スヤスヤと気持ち良さそうな寝息を立てているA。この部屋の他の患者は数刻前に行われた雲雀とのゲームに負けてしまったため、既に床に沈んでいた。つまり、この場には彼の独り言に答えられる者が誰もいないということを示している。
「……………君は昔から僕に対して警戒心がなさすぎるよね。無防備にもほどがある。」
これでも僕は男だよ？と、そう呟きながら雲雀は彼女の頬を撫でた。
「僕がしようと思えば、その首をへし折ることもできるし…」
雲雀はAの首をつー…と指先で撫でる。
「トンファーで君の頭をめった打ちにもできる。」
そのままAの頭を撫で、髪を優しくすいた。
「そして…」
Aの頬に自身の左手を添える。右肘に全体重をかけると、ベッドが僅かに軋む音がした。彼女の寝息が雲雀の頬を掠めた感覚を合図に、Aの顔へと自身の顔を近づかせる。そして、唇と唇が触れ合う一歩手前でピタリと彼は動きを止めた。
「君から口づけを奪うこともできる…こんなにもたやすくね。」
一度だけ溜息を零した雲雀は、そのまま体勢を元に戻した。そして、ナースコールを押して、それから数分と経たないうちにやってきたこの病院の院長に口端を上げる。
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