片鱗 ページ8
―――――…
「銀さん、行っちゃいましたね。」
「あんな天パーほっとくアル。銀ちゃんがいなくたって、この名探偵神楽にかかればどんな難事件も解決ネ!」
どーんと胸を張る神楽ちゃんに僕は思わず苦笑した。
「…では、お二方を家内の最期の場所にお連れしましょう。」
「それはつまり…」
「家内の………お菊の殺された現場です。」
僕はごくりと唾を飲み込んだ。
僕たちが連れていかれた場所は、【みずの】からそう遠くない原っぱだった。
「うひょー!ここはごっさ綺麗な場所アル!定春!」
「アン!」
「え、ちょ、神楽ちゃん!?」
僕の制止の声は虚しくも届かず、神楽ちゃんたちは川遊びに熱中している。水野さんは微笑みをもらしているけど、僕は気が気じゃなかった。小さな小川から川魚が時々水しぶきをあげて跳びはねる。その近くには小さな石段があった。水野さんはしゃがみ込んで花束をそっとそこに置くと、静かに手を合わせる。
「ここが…」
「はい、ここにお菊が俯せで倒れていたんだそうです。そして胸元には刀で斬られた後が…」
僕も手を合わせると、チーンと小さく鼻をかんだ水野さんが素早く立ち上がった。
「私はねぇ、犯人に復讐したいわけじゃないんだ。…ただ‥お菊がどうして殺されてしまったのか、私はそれを知りたいのです。だから、新八くん‥」
「…はい。」
「…例えあなたたちが調べた結果、そこにどんなにひどい真実があろうとも、全て私に教えてください。」
水野さんと目があった僕は思わず言葉を失った。悲しみにも負けない強い瞳が、そこには確かに存在していたから。
「…わかりました。」
僕もゆるぎない意思を持って水野さんを見た。僕の返事を聞いた水野さんはゆるりと微笑むと僅かに俯く。
「……実はね、お店を畳もうと思っていてね。数日後に江戸を出るつもりです。」
「え?」
「…恥ずかしながら、私は元々朝に弱くて。よくお菊に起こしてもらっていたのを思い出します。最近は仕込みの5時を寝過ごしてしまうことが多くてね。良い機会だと。」
「………」
「…私の一日は全てお菊で成り立っていたんだ…と今更ながら思います。お菊なしの今、一人で起きることもできない……どんなに私が無力な人間だったのか、と身を持って感じるようになりました。」
「水野さん……」
「―――こんな思いをするのは、二度目でね。もう懲り懲りなんですよ。」
106人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
早桃 - めっっっちゃ好きです、、、。これは神作品に出会ってしまったぞ!続きが気になりすぎますゥ゛ゥ゛ゥ゛! (2022年4月5日 23時) (レス) @page31 id: 636f4996a9 (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - ナツメさん» よろしくです!! (2020年6月11日 7時) (レス) id: adf0bec428 (このIDを非表示/違反報告)
ナツメ(プロフ) - printemps(プランタン)さん» プランタン様、コメントありがとうございます!更新を喜んでいただいて嬉しいです。今後ともよろしくお願いします!! (2020年6月11日 2時) (レス) id: a56d032004 (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - わーい!更新されてら (2020年6月9日 9時) (レス) id: adf0bec428 (このIDを非表示/違反報告)
ナツメ(プロフ) - 常夏さん» 常夏様、返信が遅くなり申し訳ありませんでした。コメント、ありがとうございます!!今回漸く更新しました。スローで申し訳ありませんが、頑張って今後も更新できればと思います^_^ (2020年6月9日 4時) (レス) id: a56d032004 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ