▼ ページ14
――――――――……
『……………』
Aが目を開けると、透明のカプセルのようなところに入れられていた。ドンドンとカプセルを叩いてみてもビクともしない。それどころか、先程鹿に飛ばされた時の傷がズキズキと痛みだして血を流していた。
『ふ……ぅ…』
瞳に涙が少しずつ広がっていく。
「気は済んだかね?」
俯いていた顔を上げると、カプセルの外側に大きな画面が置いてあり、そこから鹿の天人が嫌な笑みを浮かべていた。
「さて、君にはいくつか聞きたくてね?正直に話してもらえれば…こちらとしても助かるのだが。」
猫撫で声でゆっくりと話してくる。
「まずは自己紹介といこうか?私は雲鹿族の麒鵬(りんほう)。」
『……………A。』
「……ほう。012は自分の娘に…自分の奪われた名を…。泣かせるねぇ。」
意地の悪い笑みを浮かべた麟鵬に、Aは思わず後ずさった。シャランという鈴の音とジャラジャラというAにつけられた足枷の音が重なる。
「まぁ、そう逃げるな。お前はまだ利用価値があるんだ。お前の母親と違って大人しくしていれば、すぐにはころさない。」
彼はそう言って笑みを浮かべた。
―――――…
「土方さん、今山崎から連絡が入りやした。居場所と主犯が判明したそうですぜ。」
「わかった。」
そのまま踵を反して病室を出ていこうとする土方さんに急いで駆け寄った。
「ちょ、ちょっと待ってください。彼女は無事なんですか?」
僕の質問に土方さんは「わからねェー」とだけ返した。
「じゃあ、じゃあせめて、僕たちにもその場所を教えてください!」
「……ダメだ。テメェーらは大人しく寝てろ。」
「なんでですか!?Aちゃんは、僕たち万事屋の仲間なんです!仲間が苦しんでる時にむざむざ寝てられません!」
土方さんはハァーとため息をはく。
そのままツカツカと僕に歩み寄ると胸倉を捕まれた。
「……おい眼鏡、Aは万事屋の仲間だって言ったな。確かにそうだ。いや、そうだった。この間までは俺達も、あいつはただのガキだと思っていた。電気を流すっつー能力はあるにしても、だ。だがな、眼鏡。事はそれだけじゃ留まんねェーんだよ。アイツはただの江戸の娘じゃなかった。アイツは」
「副長!!」
原田さんの焦った声に、土方さんはハッと我に返ったようだった。
「悪ィな。そういうことだからテメェーら一般人に情報を渡すわけにはいかねェーんだよ。」
106人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ