【ヒロアカ】To my dearest. Ⅳ (ページ16)

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お互いの胸ぐらを掴み合って、睨みあう。頭は怒ってるから言いたくもない色んな言葉が口からこぼれてしまって、冷静な心は『(鍔迫り合いのときの気持ちに似てる)』なんて考えてる。

後ろの扉が大きな音を立てて開いて、先生が三人ほど入ってくる。先生が怒鳴ってる、気がする。エクトプラズム先生とマイク先生と校長先生だ、私たちを無理矢理に引き剥がす。

私はフーッフーッと荒い息を続けて、それでも少し冷静だった。エクトプラズム先生に押さえつけられている彼女はずっと私に向けてなにか言っているようだったが、なにも聞こえない。離されたときに彼女の爪が引っ掛かった、首の辺りがちりちり痛い。

根「金烏くん！！！」

『…………個人の、話の、もつれです、使ってない体育館と道具一式手配してください今すぐに』

根「…………それで解決するのかい？」

『………させます』

校長が二人に手配するように云う。どん、と床に座り込む。くそ、くそ、どうして。売り言葉に買い言葉、もーーーーほんと最悪。頭冷やさなきゃ、それで、ちゃんと勝って、納得してもらって、謝らないと。

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『…………淼さん、』

「……………Aチャン、さっきは堪忍ね、言い過ぎたわァ」

『ううん、気にしてないの、でもね…………勝つ、から』

「……うん、私も勝つ気で行く。」

そうして私たちはごく自然に、いつものように、距離をとる。私は、大舞台で彼女が私に勝ち、万雷の喝采を浴びる姿を思い描こうとした。

───……出来なかった。彼女は未来永劫、槍が降ろうと天変地異が起ころうと、私に勝つことはできない。そう作られてしまったのだ、そうあれと願われてしまった。私の勲(いさおし)は、並みの人間では為すこと不可能とされたものだったから。

私さえいなければ、彼女はきっと、誰よりも強かったのに。誰よりも称賛を、喝采を浴びただろう。

私は、天才などではなかった。恵まれているわけでもなかった。

それでも私が天才と称されたのは、やはり《努力の量》、だったのだろうか。

「一本先取した方が勝ち、それでおしまい。」

『うん』

彼女は所謂、名家の出だった。剣道一族。産まれながらにして、彼女は竹刀を握る運命を背負ったのだ。

一方で私はただの一般市民。何事もなければ、こんなところにいない。ただ少し前世を覚えていたり、近しい存在に剣道の先生がいたり、それが私にとっての普通だったのだ。