ヒーローのち恋人 3 ページ36
「だめっ。」
私は自分の口に手を当てて隠した。
ショックを受けているバスコを見て、つい甘やかしそうになる心に喝を入れる。
「…つ、続きはここじゃだめ！ ここ誰でも通れる廊下だからね！」
人差し指をぴっと立てて甘い空気を漂わせていた彼を止める。
「っ、す、すまない…。 俺たちの教室行くか？あそこならー」
「きーがーえっ！ まったくもうっ」
「あ、あぁ、そうだよな…。すまん…。」
2人して赤面しつつ、数秒沈黙した。
「ここからは歩くから…。一緒に来てくれる？」
と、いつかの様に手を差し出した。
そんなに欲してくれたのが嬉しくて恥ずかしくて…
流されたいと思う気持ちは一旦胸にしまった。
「ああ！」
と元気よく手を取ってくれるバスコ。
「…しかし前は閉めろ。」
ぐっと首までしっかりジッパーを上げてまた手を繋ぎ直した。
「ふふっ」
「な、なんだ？」
「んーん、なんでもない。」
バスコは緊張すると顔が怖くなるみたいだ、今もそうだった。
他の人なら怖いだけで終わるかもしれないが、私はそんな所もまた愛おしく思えた。
まだ少し照れて赤くなりつつ、私がなんで笑ったのかが分からなくて腑に落ちない顔をしていた。
「やっぱり好きだなぁって。」
そう言って繋いでいる手を こうが良い と言ってカップル繋ぎにした。
「！ … すまない。」
「え…」
何が？って言おうとした口はバスコの唇で塞がれた。
「教室まで待てなかった…。」
はぁーっと深く息を吐き、空いてる片手で私を抱き寄せ まだ足りない と呟く。
そんな彼に もうー と言いつつ、愛しくてクスクスと笑ってしまう私。
真っ直ぐに自分の気持ちを伝えてくれるのは恥ずかしかったけど、凄く嬉しかった。
こうしてヒーローと私は恋人同士となった。
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作者名：まんちかん | 作成日時：2021年2月3日 17時
