１５０話 鶴見Side ページ9
網走の事件から２日が経つが、いまだにAは目を覚まさない。
小さい花束を持ち、静かに病室のドアを開ける。Aを見ると、すでに起きていた。
窓からさしこむ光がAの横顔を照らし、長い睫毛に縁取られた瞳は夜明けの空をそのまま映したかのような鮮やかさ。
(なんと幻想的な……)
瞬きする姿すら目を奪われ、声をかけることを忘れる。
Aが周りを確認するように視線を動かし、ようやく我にかえる。
「具合はどうかな、Aくん」
声に反応し、Aの顔がぎこちなく鶴見に向けられる。
「あっ……え、その」
焦り、顔面蒼白になるA。
(この焦りよう……杉元からAくんは土方歳三のもとにいた聞いている。言及する必要はあるまい)
「今からいくつか質問するので、それに答えてほしい。それと、我々は君をどうこうするつもりは無い」
「そうなんですか……」
「もっとも、Aくんの回答によるがな」
にこりと微笑んだつもりが、逆にAは体を強ばらせる。
「御手柔らかに、お願いします」
甘味屋で見せていた“自然な笑顔”をつくり、Aは戦闘(聞く)体勢になった。
「短時間でよくそんなに調べられましたね……私の出自、結構複雑なんですけど」
質問を終え、Aが感心する。確かに、ありとあらゆる方法を使い情報を入手した。それよりも、
(短時間……か。「名前を聞いた時からずっと君の事を調べていた」と言ったら、君はどう反応するのだろう)
とは言え、信用を失うような発言は避けたい。
「Aくんの事は初めて会った時から気になっていたのでな。前々から少しずつ調べていたんだ」
(さて、そろそろ……)
手を組み、体勢を少し前屈みにする。
「実はもう１つ、Aくんに用事があるんだ」
「質問以外にですか？」
(私情だが、“こちら”が本題のようなものだ)
藪から棒だが、機会としては今しかない。
「ああ、しかし、これは『第七師団』からの提案ではなく、『私』がAくんに頼みたいことだ」
緊張感が漂い、Aの頬に一筋の汗が流れる。
「私をAくんの後見人にさせてほしい」
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華洛 - いちにちでよみきってしまいました！すごく面白かったです！更新待ち続けます！ (2022年5月19日 23時) (
レス) @page34 id: 9cd2997260 (このIDを非表示/違反報告)
冬華(プロフ) - 更新待ってマス！！ (2022年3月24日 22時) (レス) @page34 id: df15541a66 (このIDを非表示/違反報告)
名無し95348号(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました！更新待っています！！！！ (2020年9月22日 7時) (レス) id: ca8cd08e4b (このIDを非表示/違反報告)
マリンバ - めっちゃ好きです！(唐突)大変だとは思いますが、更新頑張ってください！ (2020年3月19日 15時) (レス) id: dd11928539 (このIDを非表示/違反報告)
境 - このお話好きになってしまいました！！！！更新頑張って下さい！！応援してます！！！！！！ (2020年1月17日 21時) (レス) id: 7788c7aee9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海豹 | 作成日時：2019年2月17日 1時
