今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:23,892 hit
小｜中｜大
6 ページ7
・
次の日、わたしは何も考えずに
いつも通り、秘密の場所に行った。
今、何時なんだろう。
真夜中ではないはずだ。
ここに向かう途中の住宅地から、
子どもたちの笑い声が響いていたから。
21時、くらいだろうか。
波の音は何時でも変わらない。
わたしはその音に耳をすまして、
歌いたくなったときに声を出すだけだ。
昼間の海は、好きじゃなかった。
いくつもの追憶がわたしを苦しめて、
｢唄う｣という行為を縛ろうとするから。
わたしはいつものように防波堤に座り、
テトラポッドに打つ波を見つめた。
なかなか歌いはじめるタイミングが
やってこない。すこし体勢を変えた。
だいぶ涼しい、9月の夜風が吹いた。
タイミングを掴んで小さく歌い始める。
今宵も、君とわたしだけの、
ちいさなちいさなライブが始まった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紗夜 | 作成日時：2014年3月30日 2時
