だれのものにもならないで (ページ36)

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町田さんはスーツを着ていた。
じっと携帯を見つめているようだったが
わたしに電話しようとしたのだろうか。

いや、それはないか、
そもそも携帯番号知らなかったし。

｢……お待たせしてしまいましたね｣
｢ん？大丈夫、僕が早過ぎただけだから｣

おもわず謝るとかえってくる、
穏やかで優しい口調に安心してしまう。

｢じゃあ、行こうか、なにが食べたい？｣

苦手なものもあまりないし、
これと言って食べたいものもなかった。

｢…なんでも大丈夫なのでお任せします｣

好き嫌いはないし、そう付け足すと、
町田さんはそっか、と笑って提案する。

｢僕の好きなイタリアンでもいいかな？｣

はい、と間伐入れずにこたえると、
またも町田さんは優しく微笑んでくれた。

歩き始めると、やはり町田さんは
わたしよりもすこしだけ背が高く、
そして、伸びた背筋が美しかった。

｢Aちゃんって、いくつなの？｣
｢……17です、高校二年生です｣
｢え、見えない！大人っぽいねぇ｣

心底驚いたような顔でわたしを見ると、
結弦と同い年か、と納得する。

結弦ってだれだろう？親戚かな？

心配していたとおりわたしはうまく
話をつなぐことができず、
町田さんからの質問に答えたりしながら、
気づけばイタリアンレストランについていた。

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