だれのものにもならないで (ページ33)

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SIDE 町田

｢告白はしないの？｣

結弦が真剣な目になってそう聞いてくる。

｢告白は、まだできないかな｣

彼女の好きな人は海に消えてしまった。

彼女はまだきっと彼のことが好きで、
絶対にもう戻ってこない彼を、
どこかで戻ってくると信じていて、
だからあの場所で歌っているのだろう。

｢なんかワケあり？｣

敏感な結弦に驚きながらも頷くと、
ふーん、そうなんだ！と無邪気に言う。

｢まあ、愛で開いた穴は愛でしか
埋められないってよく言うからね｣

結弦は感傷的にあはは、と笑うと、
なにを思ったのか自分の話をし始めた。

現在彼は好きな人とその好きな人と
三角関係にあるらしい。

敏感な彼は、すべてを悟ってしまった。

彼の好きな人は、親友であり
同性でもある子を好きになってしまい、
彼の好きな人の好きな人は、
結弦のことが好きなのだという。

｢同性愛者の子って、難しい｣

素敵だと思うけどな、と本音が漏れると、
結弦の表情が目に見えて明るくなった。

｢まあ、がんばれ｣

そう言って背中をぽんぽんと叩くと、
結弦も同じことをそのまま返してくれる。

こいつがいてよかったと心から思い直し、
ふたりでふたたび練習に戻るのだった。

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