だれのものにもならないで (ページ31)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:23,893 hit

30 ページ31

・

自分の歌と、自分のことばかりを
話してしまったことに後悔がぬぐえない。

｢……これからいろいろ聞けばいいか｣

家に帰ってシャワーを浴びようと
準備をはじめていると、
もやもやしたものが増えてきた。

町田さんのことを想う気持ちと、
君のことを想う気持ちのちがいが、
まだ、わたしにははっきりわからなかった。

こんなに簡単に、絢斗を忘れていいのか。
こんなに簡単に、心変わりをゆるすのか。

すこし優しくされただけなのだ、
そのくらいで絢斗を忘れて、
次の恋愛にいってしまうなんて
たぶん、わたしはほんとうにひどい女だ。

それに、町田さんからしてみたら、
わたしなんてただの暇つぶしかもしれない。

ぬぐえなくなる気持ちを
つよめのシャワーで流そうとする。

町田さんには彼女がいるかもしれない。

あんなに優しくてあたたかい人なのだ、
女の子が放っておくはずがないだろう。

彼とは友人としてお付き合いしていたい、

好きかもしれないなんて気持ちは、
今日の食事と一緒に、食べてしまおう。

そう決心したわたしは、
鼻歌を歌いながら、シャワーを浴びた。

.