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SIDE 町田
僕の好きな歌を、彼女が歌う。
特別な声で彩られたその歌は、
ほんとうに素敵で、美しいとおもった。
歌い終わると、いつもとは違って
ため息をついただけで終わってしまった。
そして彼女は突然、話し始めた。
｢わたしの大切な人、いたんです｣
消え入りそうな声で、
しかし芯の通った綺麗な声で、
彼女は僕にとって残酷なことを述べる。
次の瞬間、彼女の声色が変わる。
｢だけど二年前の今日、ここから、｣
━━ここから、飛び降りて。
｢死にました｣
そうか、だからきみは、ここで。
毎日、大切な人のために歌っていたのだ。
だから、海を見つめて泣いたのだ。
その彼が消えて行ってしまった海を、
彼の命を消してしまったこの海を見て、
彼女は歌いながら、泣いたのだ。
細すぎる彼女が抱いていた過去、
両手でかかえるにはあまりにも大きすぎた。
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作者名：紗夜 | 作成日時：2014年3月30日 2時
