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SIDE 町田
次の日に会ったAちゃんは、
どことなく様子がいつもとちがった。
座ってぼーっと海をみつめたまま、
なにも歌おうとしないし動かないのだ。
いつもは風が吹くと、
それに色をつけるように歌い出すのだが、
今回は優しい風が吹いても、
歌うどころか、呼吸さえ薄かった。
｢Aちゃん？｣
名前を呼ぶと、びくんと肩を揺らす。
彼女は今日、たぶん何かに怯えている。
涙を堪えているようにも見えた。
大丈夫かな。
そわそわしそうになる気持ちを
なんとか、自分のなかで押し殺す。
彼女を見る。
ひどく美しいその瞳が
大粒の涙で濡れているのに気づく。
彼女は泣いた。
歌うよりも、言葉を交わすよりも、
なによりも先に彼女は、涙を流した。
━━なにも聞いちゃいけない。
そうおもって、ただ黙って背中をさすった。
彼女の泣き顔は、やはりひどく綺麗だった。
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作者名：紗夜 | 作成日時：2014年3月30日 2時
