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SIDE 町田
ちょっと強引だったかな、と思う。
だけど彼女がわらってくれた。
壊れそうな普段の雰囲気とはちがって、
あたたかい、安心する笑顔だった。
｢Aちゃんかあ」
彼女と別れ、走り出してから、
そんな気持ち悪いひとりごとを言う。
可愛らしい名前だとおもった。
彼女の名前を呼べることに
底なしの嬉しさを感じてしまう。
だいぶ時間が経ってしまったが、
俺は防波堤沿いを走り、家に帰った。
ぬるめに設定したシャワーを浴びながら、
すこしだけ覚えた｢花の歌｣の歌詞を
口先でとなえて遊んでみることにした。
悲しげな歌詞は、彼女の背中だった。
━━あなたの知らない私だけがただ増えていく
彼女は何かをなくしたのだろう。
なくしたから、それを探して、いつも
あそこで歌をうたっているのだろう。
悲しげなその背中を、
守ってあげたい、と強くおもった。
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作者名：紗夜 | 作成日時：2014年3月30日 2時
