変わらないままの心

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藤ヶ谷が俺を抱き締めて離してくれないし、現状に頭が混乱しながらも、部屋に響いている時計の音だけが俺を冷静にさせた。


どうしていいか分からず、部屋の中を見渡してみると、藤ヶ谷の肩越しに壁にかかったコルクボードが目に入った。
そこには、出会った頃の俺と藤ヶ谷の姿など二人で過ごした時間を残した写真が何枚か貼られていた。
どの写真も、俺たちは肩を寄せて笑っていた。


あの頃は、こんなに距離が離れることなんて考えもしなかった。
ずっと一緒に……当たり前のように……藤ヶ谷の側にいれると思ってたんだ。



「俺、就職してから、どんどん色んな仕事を任せてもらえるようになって、嬉しかったし楽しかったんだ」
「………」
「疲れてても、すっごく忙しくても弱音言うのなんてダサいと思ってたし……藤ヶ谷なら、同じ仕事したことあるから、何も言わなくても分かってくれると思ってた」
「………」
「でも気付いたら、お前には玉がいて……俺の居場所はお前の側じゃないんだって……」
「………」
「本当は、見たんだ。玉と二人でマンションに入ってく姿。その時に、もしかしたらって思ったけど認めたくなかったし、聞くのも怖かった……そしたら、玉から付き合ってるって言われて……」
「………」
「どんなに忘れようって、友達に戻ろうって思っても、お前のこと忘れられなくて……俺には藤ヶ谷しかいないって思い知らされて……」


藤ヶ谷から返事とか何も返ってこなかったけど、自然と心に秘めていた想いが溢れおちてきた。


「また名前で呼んで欲しい、抱きしめて欲しいって、ずっと思ってた……それが今叶ってるのって、夢？」
「夢なんかじゃないよ。全部現実だよ」

やっと藤ヶ谷が言葉を発した。

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