ー参ー ページ10
五条がお土産に持ってきたバームクーヘンを頬張りながら、我が物顔でソファを陣取る男を見る。
テレビを眺めているものの、その瞳はただ映像を無機質に写しているだけなので、おそらく考え事でもしているのだろう。
『悟』
「んー?」
『シャワーでも浴びてくれば?』
何を考えているのか分からない不気味な青い瞳がゆっくりとこちらに向く。
亜空間にでも引き込まれそうな青から目を逸らさないでいると、眉はピクリとも動かさず、口角だけを嫌ったらしく吊り上げた。
「…誘ってんの?」
だいたい何を言ってくるかは察していたので、眉を下げて肩をすくめてにっこりと笑った。
『ほざけ』
そういうと楽しそうにクツクツと笑い始めたので、思わず聞こえないくらいにため息をついた。
別に、手を出されたことがないわけではない。彼とは長い付き合いだ。
いや、そういう「お付き合い」ではないのだけれど。
よく恋愛漫画で見るような、異性の幼馴染に対してふとした時に恋心を抱いてしまうことがあるように、自分のすぐ近くに異性の存在があった。
だからそういった間違いがあってもおかしくは__
「何考えてんの?」
『うぶっ』
両頬を片手で掴まれて顔を上げさせられる。いつの間にか近くに来ていたらしい。
目の前の男は変な顔、といいながら目だけで笑う。お前が変な顔にさせてるんだよ。
「僕の前で、考え事とは余裕だねぇ」
『いや知らないけど……ちょ、』
「__俺が、取り戻す。お前の
噛みつかれた唇がヒリヒリと熱を発する。
珍しくよく見える真剣な表情が心の奥深くの扉をノックして、普段は顔を見せない欲が出てこようとする。
それらを慌てて押し返すと、悟からゆっくりと目を逸らした。
『…やってみなよ。どうせできない。』
私がたとえ私でなかったとしても、生きることができなかったとしても……あなたが生きているのなら、それでいいのだ。
__だから、お願いだから死に急がないで。それがもし私のためであると言うのならば、私は私を許せない。
だって私は誓ったから。
この力を、悟のためだけに使うと。
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梅枝(プロフ) - 氷雨霰さん» 返信が遅くなってしまい大変申し訳ありません。誤字指摘いただき大変助かりました、ありがとうございます! (2022年3月25日 22時) (レス) id: 810501db12 (このIDを非表示/違反報告)
梅枝(プロフ) - ぱるむさん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません。そう言っていただけて嬉しいです、ありがとうございます! (2022年3月25日 22時) (レス) id: 810501db12 (このIDを非表示/違反報告)
氷雨霰 - すっごい面白かったです!!あと、わざとだったら本当に申し訳ないんですが…題名の「呪術士」、もしかして「呪術師」の変換ミスかもです! (2020年12月13日 1時) (レス) id: 7e61cd56ff (このIDを非表示/違反報告)
ぱるむ - めっちゃ面白いです!応援してます!頑張ってください! (2020年12月9日 21時) (レス) id: 4fbbe91aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅枝 | 作成日時:2020年11月24日 0時