ー四ー ページ14
時が流れるのは速いもので、悟は中学生になった。
可愛らしい顔つきはシュッとしたものになっていき、背丈もぐんぐん伸びたが、比例するように態度もデカくなっていった。
私はと言えば、学校には行っていなかった。小耳に挟んだ程度だが私は戸籍上では死亡扱いになっているらしい。
小学校も行っていないので読み書きすら危ういかと思いきや、悟が何か言ってくれていたのか、教材だけは手元に入ってきた。
とはいえ先生はいないので、ひたすらに読み漁っては勉強していた。まぁ暇だったし。
しばらくして五条家から仕事_例えば大っぴらにしたくないような呪術関連の調査_を斡旋されるようになるが、そこまで危険なことはなかったが、補助も最低限しかないので死にかける事もあった。多分、あっちの人達的にも死んでもしょうがない位の認識だったのだろう。
それでも、細々としたものではあるが悟に特訓に付き合ってもらったりしながら必死に食らいついた。その甲斐もあり、悟が中学3年になる頃には仕事も問題なくできるようになっていた。
寒さがやっと和らいできた冬の終わり頃、珍しく悟が学校から帰ってきてすぐに私の部屋にやってきた。
突然来るのはいつもの事だったので、私は読んでいた本を閉じながら「おかえり」と言ってみる。反抗期真っ只中というやつか、無視したり、「あ」とだけ返してきたりすることも多かったが、今日は機嫌がいいのか「おう」と返ってきた。
最近は進学について色々揉めていたみたいだけど、この感じからすると進展があったのだろうか。
「呪術高専は東京で納得させた。俺は寮暮らしになるけど、お前用にマンションを借りさせたから。」
『……うん?』
「お前もついて来い。」
驚いて目も口も開けっぱなしになった私を、悟は満足そうに見やって笑う。
絶対東京校に通うとはぼやいていたがどうやって納得させたのかとか、マンションって一部屋のことだよね?とか、聞きたいことはいっぱいあるのだけれども__どうにか口に出せたのはバカみたいな承認欲求だった。
『…ついて行っていいの?』
「そうしないと俺の隠れ家がなくなるだろーが。」
ガシガシと頭を掻き、ぶっきらぼうにそういう悟を見ながら、私はついに溢れる笑みを抑え切れなくなった。
逃れたい時に便利な隠れ家の管理人。たったそれだけ。でも、それでいい。
いつだって私の居場所をくれたのは悟だった。
『そうだね。うん。……うん。』
独りごとのようにそう言って、私は何度も大きく頷いたのだった。
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梅枝(プロフ) - 氷雨霰さん» 返信が遅くなってしまい大変申し訳ありません。誤字指摘いただき大変助かりました、ありがとうございます! (2022年3月25日 22時) (レス) id: 810501db12 (このIDを非表示/違反報告)
梅枝(プロフ) - ぱるむさん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません。そう言っていただけて嬉しいです、ありがとうございます! (2022年3月25日 22時) (レス) id: 810501db12 (このIDを非表示/違反報告)
氷雨霰 - すっごい面白かったです!!あと、わざとだったら本当に申し訳ないんですが…題名の「呪術士」、もしかして「呪術師」の変換ミスかもです! (2020年12月13日 1時) (レス) id: 7e61cd56ff (このIDを非表示/違反報告)
ぱるむ - めっちゃ面白いです!応援してます!頑張ってください! (2020年12月9日 21時) (レス) id: 4fbbe91aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅枝 | 作成日時:2020年11月24日 0時