story.7 ∗*゚ ページ8
「…大丈夫?」
頭の上から降ってきた声に、止めていた息を吐き出す。
鼻をくすぐるのは、爽やかな柔軟剤の香りと、微かな汗のにおい。
ドクドクと早い心臓の音が、耳から伝わってくる。
ゆっくりと顔を上げると、息が荒くなっている赤葦さんと目が合った。
びっくりして反射的に離れようとしたけど、背中にしっかり腕が回されていて、離れられない。
…至近距離の赤葦さん、超かっこよすぎる。
え、なんかこれ、朝にも似たようなことが…。
赤葦「あっ、ちょっと…!」
急に膝から力が抜けた。
さっき聞こえた赤葦さんの心音よりも、さらにバクバクとうるさい自分の心音。
貴女「やばい…かっこいいの暴力…」
赤葦「え?」
夜久「A!」
黒尾「待てって言ってんでしょーが!」
至近距離の赤葦さんに、そろそろ限界を感じていると、おにいと夜久さんの声が聞こえた。
夜久「え?赤葦?」
黒尾「A!?どうした!?」
貴女「おにい…立てない…」
赤葦さんに支えてもらって、なんとか立っている状態の私。
おにいが慌てて回収してくれる。
黒尾「どうしたんだよ…」
貴女「至近距離の赤葦さんかっこよすぎて、力抜けちゃった…」
「「「は?/え?」」」
…みんなして目を点にしなくてもいいと思う。
仕方ないじゃん、かっこよすぎたんだもん。
夜久「ったく…心配させやがって」
はぁーっと大きな溜息。
ごめんなさい。
おにい、とりあえず息して。
夜久「で、赤葦はどーした?」
赤葦「あ、これ、マネージャーさんのかなって」
赤葦さんがポケットから取り出したのは、たった今私が探しに行こうとしていたヘアピン。
貴女「わ、私のですぅーーー!」
赤葦「よかった。体育館に落ちてて、そうかなって。黒尾さんに確認しようと思って、木兎さんが電話してくれたんだけど…」
黒尾「俺?電話?…あれ?」
夜久「どした?」
黒尾「…スマホがない」
「「え!?/は!?」」
私と夜久さんの声が重なった。
赤葦「黒尾さんのスマホも、落ちてました」
はい、とそれぞれ渡してくれる赤葦さん。
貴女「ありがとうございます…!あの、もしかして、これを届けるために追いかけてくれたんですか?」
赤葦「うん。間に合ってよかった」
ふわ、と笑う赤葦さん。
黒尾「あっ、おいA!」
夜久「またか…!」
先程まで辛うじて耐えていた私の意識は、イケメンの微笑みに吹き飛ばされた。
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作者名:沙夜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/annzuamenoheya/
作成日時:2024年3月6日 9時