恋に恋するお年頃【音駒高校】 (ページ7)

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孤爪「A、ヘアピンは？」

貴女「え？」

練習試合の帰り道、1年生の皆に仲良くなった先輩マネさんの話をしていると、振り返った研磨くん。

左耳の辺りを触ってみる。

いつもならそこには、猫の顔の形をした、赤いヘアピンがあるはずだった。

貴女「…ない！」

落とした？どこで？いつ？

思考を巡らせても、全然思い出せない。

犬岡「あ、いつも着けてるやつ？」

貴女「そう！」

芝山「キラキラの可愛いの？」

貴女「そう！ありがとう！」

灰羽「なんでありがとう？」

孤爪「あのヘアピン、Aが作ったんだよ」

「「「えっ？」」」

孤爪「趣味でアクセサリーとか作って、ネットで売ってるんだよね」

「「「え！？」」」

前を歩いてた先輩たちまで振り返る。

貴女「いっぱい作ってたら、研磨くんが『売れるんじゃない？』って言ってくれて」

孤爪「これ」

研磨くんが、スマホの画面を皆に見せる。

某フリマアプリの、私のページだ。

ヘアピン、ヘアゴム、ブレスレットなどのアクセサリーの他にも、小物入れや写真立て、最近はハーバリウムなどにも手を出している。

本当に趣味で始めたことなんだけど…。

芝山「え！すごい！SOLD OUTばっかり！」

孤爪「結構人気なんだよね」

研磨くんが得意そうな顔をする。

貴女「あのヘアピン、私が初めて作ったの…」

中学3年生の春、たまたまやっていたレジン体験で。

高校生になったおにいと研磨くんは部活ばっかりで、なかなか構ってもらえなくて。

ふたりの通う高校が「ネコ」と呼ばれているのと、バレー部のユニフォームが赤だったから、猫の顔の型に、赤いレジン液を流し込んだ。

好きなパーツを入れて、自分でも可愛くできたと思ったけど、それ以上に嬉しかったのは＿＿。

貴女「おにいと研磨くんが、可愛いって、褒めてくれたのに…」

ふたりに褒めてもらえて。

ふたりと一緒に居るみたいで。

嬉しくて、大事で、お気に入りのヘアピンなのに。

貴女「私、探してきます！先に帰っててください！」

黒尾「ちょ、A！待ちなさい！」

おにいの止める声を背中で聞きながら、先程通ったばかりの小路を曲がった、その瞬間＿＿。

貴女「っ！」

何かに思いっきりぶつかった。