一章『入社試験』 ページ10
翌日、特に変わらずいつも通りの時間に起きて支度をする。
朝食も済ませてのんびりしていると、部屋に甲高い音が響く。
「
珍しく訪問者を知らせる音が聞こえて開けてみたら、開口一番にこれだ。
何も云わずドアを閉めようとしたが、ドアと壁の間に足によって呆気なく阻止された。
思わず舌打ちをしそうになった。
「そんな冷たい態度を取らないでくれ給え。
…私、泣いちゃう。」
「……。
それはそうと、朝早くに呼鈴を鳴らしたのは何故?」
泣くから何だと云うのだろうか。
太宰の冗談にいちいち付き合っていては心労で疲れ果てる。無視するに限る。
「ほら、敦君の入社試験。あれの担当になってね。」
「あぁ…昨日会議とかしてたねぇ。」
昨日、中島君を社員寮に寝かせた後、入社試験の内容会議をやっていたのを思い出す。
何か面倒事があると察知したので書類整理が終わったあとにすぐ帰ったが。
「つまり手伝えと。」
「そうそう、話が早くて助かる。矢張り持つべきものは善き同僚だなぁ」
「…………。」
矢張り、こうなるか…。
抜け駆けさせない心算だな…。
「諒解…。何をしたら良いの?」
「ふふふ、それはね_______」
◆◆◆
太宰との話し合いの後、探偵社事務所にて。
そこには、昨夜の会議で決まった役通りの配置を行っていた。
「大役だね、谷崎君。」
「で、ですね〜。ボクに務まるかどうか…」
「悪いお兄様、楽しみにしてますわ。」
まず、犯人役の谷崎君。
そして人質役の谷崎君の妹、ナオミちゃん。
そして_________
_________先に駆けつけたは善いものの、犯人に捕まってしまったダメな先輩役、
何故この役柄なのだろう。
色々と突っ込みたい。
あわよくばぶん殴りたい。
『人質が多い方が、事の重大さがより伝わるだろう?』
との事で、私も縛られ役だ。
だがすぐ解ける結び目だったので、
痛くはなさそうだ。
さて、と。
ナオミちゃんも私も手順通り猿ぐつわをし、手を縛った。
後は待つのみ、だ。
◆◆◆
やがて。
立花の耳に三人分の足音が届く。
それは無意識下で行われる、異能力による聴力の拡張。
『影狼』の耳。長年寄り添った異能。
息をするように使役できる、自身の一部。
当たり前の常識。
探偵社員___福澤社長の部下___になる前から、異能の制御は簡単だった。
ただ一つ、ままならないのは_______
__________暗闇での制御だけだった。
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りノんと(プロフ) - むっくです!とても良かった!アニメ知らなくても楽しめた←応援してるよー! (2016年9月25日 16時) (レス) id: da89d499a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:永月はんと | 作成日時:2016年9月11日 10時