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一章『入社試験、其の肆』 ページ13

「どうするって、その装置の指紋を調べれば確実だし、
何より目撃者が」
太宰がその場で華麗にターンをした。
「こぉんなに居るのだよ?逮捕にならない方がおかしい。」

「あぁ、間違いなく有罪だな。
何方かで構わない、起爆装置を取ってくれ。」
中島君は私と一瞬だけ目を合わせると、
「じゃあ僕が…」と名乗り出てくれた。
机に目を向けずに手を伸ばす。

我々の立ち位置的に中島君の方が少しばかり机に近いが、
自ら名乗り出てくれるとは思わなかった。
本当に良い子なのだと少し関心した。
その優しさに少しだけ良心が痛む。

先程そう刷り込んだ(、、、、、)甲斐があった。
楽な手段が目の前にあるなら人間は必ずそれをする。

異変に気づいた太宰が忠告を飛ばすも、もう遅かった。
「敦君!待っ_______」
「えっ」

起爆装置の押される乾いた音が室内に響いた。

「えっ!」
「な、_______!」

各々驚く素振りをし、これは偶然であると錯覚しそうになる。
勿論今回も一番驚き縮み上がってるのは中島君だ。

爆弾の時計に三○と表示される。
「残り三十秒!?二人とも早く________」

◆◆◆

立花の視界が乱れた。
状況を理解した敦が立花を投げ飛ばしたのだ。
太宰がそれを支え、立花が気づいて目を開けた頃には、
敦が爆弾に覆いかぶさっているところだった。

「なっ_________!!」
「莫迦ッ!」

作られた場面、事件が蔓延するその探偵社事務所でただ一つ真実だったのは、
中島敦の心と考えであった。
そして、今社員達が浮かべている驚きの表情だった。
敦は初めから、合格の切符を持ってこの試験に臨んだようなものだった。

◆◆◆

耳元で焦ったような声がした。乱れる視界に思考。
全てを捉えるには速すぎたが、理解が追いつかなかった。

中島君は、自分の命と引き換えに、私を爆弾から遠ざけたのだ。

_________合格。

浮かんだのはその二文字だけで、それ以外は有り得ないという気がした。

後から状況を整理し、
今私は太宰に寄りかかっている、もとい抱えられている状況にあるという事がわかった。
少し恥ずかしい……

「あ、ありがとう。」
「あぁ、真逆投げられるとは思わなかったなぁ。」
「確かに。」
太宰の手を借り、立ち上がり、きゅっと目を瞑り続ける中島君に声をかける。

「中島君、中島君、それ偽物だよ。」
「エッ!?」
「おめでとう、中島君。合格だよ。」

そこから事情を話す間に中島君の絶叫が五回も響いた。

一章『実力行使』→←一章『入社試験、其の参』



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りノんと(プロフ) - むっくです!とても良かった!アニメ知らなくても楽しめた←応援してるよー! (2016年9月25日 16時) (レス) id: da89d499a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:永月はんと | 作成日時:2016年9月11日 10時

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