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杉元を抱え、のっぺら坊を引きずり先を行く谷垣


『…ハァ…ハァ…っ』


彼の後をついていくが距離は段々と開き始める


谷垣に腕を引かれんどけば…心臓に当たっとった…


邪魔された怒り 直ぐに撃たれなかった悔しさ

救えなかった悲しみ また生き残った苦しみ

そして生きていると安堵している自分への嫌悪感

様々な感情に涙が溢れ出す


『っ…最悪や…ゥウっ…』


等々進めていた足が止まった


溢れる涙で前が見えない

ぐちゃぐちゃな感情に吐き気がする

今、何処にいるかも分からない


膝を折り座り込んだ


『お、いて…いくな……ゴホッゴホッ』


込み上げた血溜まりを吐き出した

身体中に血を送り込もうと早くなる心臓

だが、腹と背から流れる出る血は止まらない

熱を持つ傷とは反対に冷えていく手足


…あぁ、そうか…このまま1人でおれば死ねるんか…


建物に背を預け、生きようとしていた体の力を抜く


生きるのを諦めた瞬間、混沌とした感情が消えた

舞い上がる煙の隙間から見える星々を見上げた

周りの音が消え、静かになる


結局私はひとりやったな


鉛のように重い体は痛みも飛んでいったようだった

顔が下がり、瞼も開けているのが億劫になる


…もう……1人でよか……寝よう…


コツ


瞼を閉じようとした時、辛うじて見える視界の中に誰かの足が映った


「白水A」


目の前でしゃがみ顔を覗いてくる人に眠りかけていた意識が戻ってきた


『……っ…』

「私が分かるか?」

『…つ、…るみ…さ…』


鶴見はAの頬を優しく撫でた

大勢の血に濡れたその手は熱く、心地が良かった

Aの顔を少し動かし視線を合わせる


「こんな所で死んではいけない」

『…っ』


鶴見の優しい表情に止まっていた涙が溢れ出す


「谷垣や杉元達も保護している。安心しなさい」


溢れる涙を優しく拭う手


「さぁ、おいで」


その言葉に小さく頷き、安心したように意識を手放した


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げん(プロフ) - しろやぎさん» ありがとうございます!そのお言葉が最高です!頑張ります! (2023年1月9日 0時) (レス) id: a079014d07 (このIDを非表示/違反報告)
しろやぎ - もう最高!!全てが大好きです!! (2023年1月5日 9時) (レス) @page22 id: 99b2f3a031 (このIDを非表示/違反報告)
げん(プロフ) - くれはさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいお言葉です!励みになります!更新頑張ります!! (2022年12月28日 21時) (レス) @page16 id: 3da1d6569e (このIDを非表示/違反報告)
くれは(プロフ) - 文章構成や、ストーリーの流れて会話がきれいで読んでいてとても楽しいです!更新楽しみにしています! (2022年12月28日 14時) (レス) @page13 id: f312d035a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:げん | 作成日時:2022年12月22日 22時

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