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キロランケと別れたAは杉元の後を追い教誨堂へと向かう
倒れている第七師団の兵士から軍帽を拝借し、深くかぶった
兵士達の目を欺き、照明弾の光が届かない道を走る
ドンっ
散弾の音が聞こえた方に迎えば、右足と右手を失った男が倒れていた
『…この人ッ』
旭川で見た、断面の綺麗な右足を思い出す
「ウゥッ」
ヘッドギアをかぶる彼は薄らと目を開いた
『!』
第七師団に囚われた時に居た双子の片割れだと気付き、思わず駆け寄る
背嚢から布を出し、腕を縛った
『…これしか出来ん。すまない』
呻き声をあげながら睨みつけてくる彼の側に帽子を置き頭を下げる
タッタッ
背後から足音が聞こえAはその場を後にした
杉元も重傷の筈だ…
やっぱりこっちに来て正解だった
Aは再び教誨堂への道を走った
人の話し声が聞こえ道を変え、広場に出る
『!…いた…』
そこには杉元とのっぺら坊が座っていた
警戒させないよう陰に隠れ話を伺う
双眼鏡で何処かを見るのっぺら坊
その先を見れば屋根の上にアシリパが立っていた
遠くからでも分かった
アシリパが顔を歪め悲しんでいることが
…本当にアシリパさんのお父さんだったのか…
その事実にAも表情を暗くさせる
「アイヌを…殺したのは私じゃない」
のっぺら坊のその言葉に驚き、顔を上げた
「…ああ?」
「アシリパに伝えろ。金塊…」
シュパァァァ
「『!?』」
突然、のっぺら坊の頭が撃ち抜かれた
瞬時にのっぺら坊を盾にした杉元
Aは2人の元へ駆け出した
シュパァァ
『ッツ!!』
ふたつ目の銃弾が杉元の頭を撃ち抜いた
『杉元ッ、杉元ッ!!』
Aは背嚢を下ろしシャツを引き裂いた
止血を試みるが赤いそれは止まる事を知らない
…だ、ダメだ…どうしようッ…早く何処かでッ…
絶命したのっぺら坊が目に入り、息が詰まる
『あぁ、ダメだ』
杉元の死が頭を埋め尽くし、手が震え出した
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げん(プロフ) - しろやぎさん» ありがとうございます!そのお言葉が最高です!頑張ります! (2023年1月9日 0時) (レス) id: a079014d07 (このIDを非表示/違反報告)
しろやぎ - もう最高!!全てが大好きです!! (2023年1月5日 9時) (レス) @page22 id: 99b2f3a031 (このIDを非表示/違反報告)
げん(プロフ) - くれはさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいお言葉です!励みになります!更新頑張ります!! (2022年12月28日 21時) (レス) @page16 id: 3da1d6569e (このIDを非表示/違反報告)
くれは(プロフ) - 文章構成や、ストーリーの流れて会話がきれいで読んでいてとても楽しいです!更新楽しみにしています! (2022年12月28日 14時) (レス) @page13 id: f312d035a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:げん | 作成日時:2022年12月22日 22時