197 ページ1
．
「乾かして保管しているぺカンペは皮を剥き中の白い実をひいて団子や餅にする。採れたてのものは塩茹でにしてご飯に混ぜて食べる。栗みたいでホクホクで美味しいんだ」
「へぇ美味しそうだね」
『万能やね』
アシリパの親戚の家に上がり、夕食の準備をする
「もう直ぐぺカンペの収穫時期だが採っても奴らに全部奪われるかもしれない。皆不安になっている」
「奴らって他のコタンの人たち？」
親戚の叔父さんは違うと首を振った
奴らとは全員目が見えない盲目の盗賊だと言う
そして彼らを纏めている親玉の体には奇妙な入れ墨があったと言った
「白石何か心当たりはあるか？」
「ああ噂には聞いてるぜ。恐らく手下の盗賊も全員網走監獄の囚人達だ。暗号の刺青持ちは親玉1人だけどな」
「そんなに盲目の囚人がいたのか？」
「そいつらは硫黄山で苦役させられた囚人だろう。そこに派遣された囚人は無事に戻って来れないと噂されていた…」
『硫黄山…。吹き出す亜硫酸ガスは採掘者の目を侵し、命まで奪ってしまう…』
「そうだ。囚人達も失明する者が続出して、たった半年で42人もガスで死んだ。盗賊の親玉はその時の生き残りさ。失明してからのっぺら坊に入れ墨を彫られた。その男は都丹庵士だ」
白石の話でこの付近に現れる刺青の囚人は都丹庵士という男だと確信に近づいた
翌日、塘路湖の村に別れを告げ北へ進む
数日掛け60キロ程進み、屈斜路湖の近くの村へと到着した
アシリパと杉元が狩へ出掛けている間、皆それぞれに過ごす
Aは薬草を採りに森の中へと来ていた
『山菜も摘んどくかな…』
がさっ
『いつも付いてくるな』
「……。」
草陰から出て来た尾形に少し眉を寄せる
『…初めから一緒にくればよかやん』
視線を手元に戻し、小さく呟いた
尾形はAは隣にしゃがみ顔を覗き込む
「…この間の続きでもするか？」
ニヤニヤと笑う顔を横目で睨んだ
『続き？あれ以上はない』
「それはどうかな？」
尾形の手が首筋を撫でる
『残念。今は流されん』
手を掴み、笑顔でギリギリと握りしめる
「そう怒るな…、お、おい…」
握る力が強いAに尾形は小さな焦りを見せる
『溜まってるなら1人でどうにかしろ』
パッと手を離し、山菜摘みに戻る
尾形は悶々としながら、手を摩りながら面白くないと拗ねた
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 140人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
げん(プロフ) - しろやぎさん» ありがとうございます！そのお言葉が最高です！頑張ります！ (2023年1月9日 0時) (
レス) id: a079014d07 (このIDを非表示/違反報告)
しろやぎ - もう最高！！全てが大好きです！！ (2023年1月5日 9時) (レス) @page22 id: 99b2f3a031 (このIDを非表示/違反報告)
げん(プロフ) - くれはさん» コメントありがとうございます！とっても嬉しいお言葉です！励みになります！更新頑張ります！！ (2022年12月28日 21時) (レス) @page16 id: 3da1d6569e (このIDを非表示/違反報告)
くれは(プロフ) - 文章構成や、ストーリーの流れて会話がきれいで読んでいてとても楽しいです！更新楽しみにしています！ (2022年12月28日 14時) (レス) @page13 id: f312d035a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：げん | 作成日時：2022年12月22日 22時
