160 ページ14
．
「…だがお前は俺を助けた。それも後悔しているのか？」
『………こげん暖めてくれる人に後悔しとるなんち言えんばい…』
Aは声を小さくし呟き、包み込んでいた尾形の手を握り返す
『大きい手だ』
「お前は傷が多い」
『ハハ、そうだな』
止血している布にじんわりと滲む血が尾形の手に移る
「……お前は…」
言い淀む彼に珍しいと首を傾げる
「…愛情の無い親が交わって出来る子供はどうなると思う」
いつもより少しだけ弱い声に本人の事だと理解する
『…分からない』
「……。」
『愛情が2人の間にあっても子供に注がれるとは限らん』
「…？」
『…私の親は…私が生まれた日に2人で心中した』
尾形の手に腹部に残る傷跡を触れさせる
『その結果がこれだ。私も殺してくれれば良かったんに…』
手を離し、短くなった髪に触れる
『でもな…、私は母に似てると言われたこの髪を大事にしていた。親族達から賤しいと何度も短くされたが私は伸ばし続けた』
「…何故だ…お前を1人にした人間だろう」
『……母の様に一緒に死んでくれる誰が見つかると思ってな…』
Aは声を小さくし答える
「……俺が一緒に死んでやろうか」
『…馬鹿言え。お前には野心がある』
Aは身を捩りモゾモゾと体の向きを変え、尾形と向き合う
『私達、似ているな』
「そうだな」
お互い光の無い真っ黒な瞳で見つめ合う
『愛情の知らない…欠けた人間の間から生まれるのはどんな人間だろうな』
「試してみるか？」
ぐっと腰を引き寄せられ、低い声で囁かれる
『辞めとけ。私には意味がない』
「？」
尾形にその言葉の意味は分からなかった
抵抗せず寄り添うAはゆっくりと瞼を閉じる
『…寒いのは…苦手だ…』
「…寝るのか？」
『…尾、形も……寝ろ…』
彼女はこちらを向いたまま眠りについてしまった
「……無防備だな。食われても知らんぞ」
尾形はため息を吐き、背中に手を回す
「あたたかい」
Aを腕の中に閉じ込め、共に眠りについた
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 140人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
プスメラウィッチ - できれば尾形百之助の生存ルートでお願いします。 (2022年12月13日 19時) (
レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
げん(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます！今作は原作沿いで進めたいのでご要望にお応え出来るかははっきりお約束出来ません😢ですが、必ず別ルートのお話を作るのでのお待ち頂けたら嬉しいです！ご期待に添える様頑張ります💪 (2022年12月10日 0時) (レス) id: 5b928c7d8e (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - げんさん初めまして、この小説はできれば尾形百之助オチでお願い出来ますか？後、尾形百之助は死なないで欲しいです。お願いします🙏続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年12月9日 10時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：げん | 作成日時：2022年11月29日 19時
