140 偽アイヌ ページ42
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アシリパ一行は更に山道を進み、樺戸へと向かう
『先生はスーツが本当よく似合う』
寝る時は柔道着に着替えたりと、革靴を脱ぎ素足で山道を歩く紳士的な牛山にAは関心していた
「嬢ちゃんに褒められると嬉しいねぇ」
『それに本当丈夫やし……今度、先生の筋肉診せて？』
「床の上なら見せてやろう」
『……。』
「おいッ悩むな！ちゃんと断りなさい！」
杉元に怒られAはヘラっと笑った
「見ろ、コタンがあるぞ。樺戸までもう直ぐだけど休ませて貰おう」
森を抜け樺戸付近の村へと辿り着いた
「この村にもアシリパさんの親戚がいるの？婆ちゃんの15番目の妹とか？うふふッ」
「フチの15番目の妹は釧路にいる。この辺に親戚はいない。初めて来た」
冗談で言ったつもりの杉元は驚いて口が半開きだった
「やぁ、こんにちは。アンタら何の用だい？」
すると1人のアイヌの男が話しかけて来た
「旅をしていて寄っただけだ。今晩の寝床と米があったら分けて欲しい。勿論タダでとは言わん」
「そうだったのかい」
「あんた日本語上手いね」
彼は若い頃に和人相手に荷揚げの仕事をして覚えたと言う
「オイなんだあれ」
「ん？あれは子熊のオリ…」
牛山が指差した檻を見ると中の熊は成長しており隙間から毛がはみ出る程ギチギチになっていた
「ちょっと子熊が大きくなるのが早くてな。大きい檻を作ってうつすところだった。気にしないでくれ」
そう答えたアイヌの男にAは目を細め、横目でアシリパを見る
「俺はエクロク。俺の父であり村長のレタンノエカシに滞在の許可を貰うといい」
一行はエクロクについて行き家に案内される
「アイヌの家を訪問する時はいくつか作法があるんだ。俺はこれまで何度かやった事があるからよく見ておけ。騒ぎを起こしたくなければ行儀よくしろよ。特に尾形」
尾形は名指しされ少しムッとする
「ハ、エエ…。先ず家の外で咳払いをする。家の人にすいませーんなんて声はかけてはならない。ンンンン…」
杉元の咳払いに家の中から少し若い男が顔を出した
「？…引っ込んじまったぞ」
「家の若い男が外に来た客を無言で確認して主人に報告するんだ。主人が入れるのを許可すればこれから家の掃除が始まる」
杉元はヒソヒソと話し、家の中に耳を澄ませる
掃除が始まり安心しつつも暫くは家の中に入れないとみてAは座り込む
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作者名：げん | 作成日時：2022年11月3日 17時
