じょうもんさんば雪の上 / 参 (ページ37)

今日:44 hit、昨日:60 hit、合計:52,711 hit

135 ページ37

．

「…大丈夫か？」

『…ごめんね…ハハ…』

手が震えシャツのボタンを上手く閉めることが出来ずにいるAにアシリパは着物羽織を肩に掛けた

少しして杉元が戻ってきた

「…A、ごめんね。俺、牛山しか見てなくて…」

『良いんだ。お前は悪くない』

Aは笑顔を作り杉元を見る

「…震えてる。無理に笑わなくて良いんだぜ？」

直ぐに震えに気づいた杉元はアシリパの隣に座り込む

「…A。どうか教えて貰えないだろうか」

アシリパの聞きたい事はすぐに分かった

下を向き震えの止まらない両手を摩り目を泳がせる

もう1度、2人の顔を見るととても心配した顔でコチラを見ていた

『…分かった』

Aは1度深呼吸をし、羽織を脱いだ

「待て、嫌なら良いんだぞ？」

「その、脱がなくても…」

『見て貰った方が早い…。それに白石には札幌で見られてる。アイツは頭が良いから何の傷か直ぐに分かってるはずだ』

そう言ってAは背を向けシャツを脱ぎ、サラシだけの姿になる

「「！！」」

背中や肩、腰や腹にまで火傷や切り傷、痣などが所狭しと跡を残していた

『…酷いだろう。…全て幼い頃に受けた傷だ』

「…！？…一体何が…」

『…虐待……と言えば良いのだろうか…』

「「！」」

驚く2人を横目にシャツを着直す

『両親は物心付く前に亡くなっていて顔も知らない。祖父に引き取られたが、彼が亡くなった後は地獄だった』

優しい祖父が亡くなれば周りの大人は掌を翻し、Aを玩具の様に扱った

傷を付け遊んだり、性欲の果てに使ったり、最早人間の扱いでは無かった

『…気持ちの整理はついとっても…恐怖を体が覚えとる。…どうしても動けなくなる……』

尾形に捕まれた手首に触れる

『医者家系の癖に裏じゃ酷いもんだっ……私は家畜同然やったし、……毎日死にたくて堪らんかった…』

Aは疲れた笑顔で2人を見た

．