じょうもんさんば雪の上 / 参 (ページ33)

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Aは少しニヤけていた顔を引き締め、目を細めた

『何だ羨ましいか？こんな格好の良い人に撫でて貰える事なんて中々無いからな』

「望みであればいつでもしてやろう」

『本当ですか？やった！』

2人のやり取りを見て尾形は心底嫌そうな顔をした

「俺の前でいちゃつくな」

『じゃぁ、どっか行かんか』

Aは尾形を睨みながら小さく呟いた

「お嬢さんは九州の人間か？」

「福岡の人間だ」

尾形は面倒臭そうにAより早く問いに答えた

『お前がお嬢さんさんなのか？あ？？』

「土方、あっちの部屋に手掛かりがありそうだ」

「あぁ、分かった行こう」

Aは啖呵を切るが案の定無視された

『私も行こう』

「お前は動くな怪我人」

『誰のせいだよお嬢さん』

「お前の勝手だろう？」

『お前が引き摺り込んだんやろうが』

猫同士の喧嘩のように2人は睨みあう

「こら、喧嘩はよしなさい」

土方は尾形の背を押し部屋から退出させ、Aを見た

「私はいつでも歓迎する。よく考えなさい」

そう言って土方も部屋を出て行った

猫も居なくなり、再び1人になったAは机に頬杖を付き共に座る剥製を眺めた

『…牛皮…馬皮……豚皮……人皮…』

いや分からん

思い当たる事を呟いてみたが革の知識がある訳でもなく結局行き詰まる

ひとつに結んだ髪を撫でながら何気なく窓の外に目をやると一瞬何かが動いた

『？』

警戒を強め、立ち上がりそっと窓に近づく

ガシャンッ

『！？』

突然、割れた窓ガラスに襲われた

投げ込まれたものを確認する

『いかんッ』

投げ込まれたのは火炎瓶だった

ボォオオオっ

一気に6体の剥製が炎に包まれた

『…っ！』

炎に後を追われ、廊下に転がり出たAの元に尾形と土方が走って来た

「あッ！？チッ…やられた」

「大丈夫かっ？」

『ッえぇ。外に軍服を数人確認した』

Aはガラスの破片で切れた頬の傷を拭いながら立ち上がり、直ぐに拳銃を取り出す

弾を確認する姿に2人は少し驚いた

『この家ごと証拠隠滅するんか…。私荷物取ってきます』

真面目な顔付きのAは外から見えない様に2階へと上がって行った

「判断が早い。良い娘だ」

「……｡」

土方は笑い、尾形はその後姿を目で追っていた

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