じょうもんさんば雪の上 / 参 (ページ24)

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『お、お前…名前は…』

「尾形百之助だ」

『はい、尾形さんね。謝礼金お待ちしてますんで…』

「ぁ？」

『って、そんな場合やないよなッ…』

Aは尾形から目を逸らし先を見た

前方から聞こえてくるのは風の音と発砲音そして、白石の叫び声だった

「オマタが裂けるッ！！！」

どうやらレールが切り替わり杉元達は別の線路に進んで行ってしまったようだ

「邪魔だ」

『うおっ』

銃で押され倒れ込むAを他所に尾形はレールの切り替えバーを銃で撃ち、元に戻した

トロッコは月島達が乗るトロッコと同じ線路を進む

「ははあッ」

『凄いっ、アレに当てるなんて！凄いなお前』

Aは余りの的確さに思わず声を上げ尾形を見上げた

だが尾形は真顔でこちらを見下ろしていた

『あ、いや私はあっちに行きたかったんだ…』

感情の読めない尾形の顔にAは困惑するしか無かった

トロッコは速度を上げ、月島達に近づく

「尾形だッ！頭を下げろ！撃たれるぞ！」

『月島さーんお久しぶりでーす！』

「何故お前がいるんだ！？」

『拉致られました〜！この人本当に敵ですか？』

「何を呑気なッ！尾形貴様！そいつが誰か分かってるのか！？」

「鶴見中尉の探しもののひとつだろ？良い駒になると思わないか」

『おい触んな。月島さん助けて〜』

肩を抱こうとする尾形の手を払い落とし、月島に手を振る

「〜〜ッ〜」

月島は面倒事が増えたと頭を抱えた

「オイ！止まれ止まれ！！」

『？』

周りの炭鉱の人達が必死でトロッコを止めようと声を掛けている事に気がついた

「マイトに火を付けたぞォ！止まれーっ！発破に巻き込まれるぞ！」

しかしそれが聞こえたのは尾形とAだけだった

「いかん」

Aは後ろに体重をかけ、尾形は銃で無理矢理車輪を止める

ドォン

『月島さんッ』

Aは直ぐに飛び降り後を追いかけ走り出した

「おい待て！！」

尾形が声をかけるもAは戻ってこなかった

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