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「でもいっぱいフキ持って帰ってきたね」
後から来た杉元は首を傾げた
『あぁ、フキは喉に良いんだ。痰や咳を鎮めてくれるし、解熱にも使える。フキノトウは腹に良い。食欲増進や消化を促す。生葉の汁は虫刺されにも効くぞ。ギョウジャニンニクもそうだ。疲労回復に良い。今度酒に漬け込みたいと思ってる』
心なしか楽しそうに話すAに杉元は笑った
「知識が凄いな」
『そんな事より杉元。アシリパさんに油を塗ってもらう前にヨモギを汁を傷に塗っておけ』
「汁？」
『ヨモギを噛んで少し潰して塗るんだ。1人で出来ないならアシリパさんにお願いしろ。私は忙しい』
「も〜、そのくらい1人で出来るから」
『アシリパさんお願いするね』
「あぁ、任せろ」
「1人で出来るってば！」
結局アシリパにヨモギの汁を塗って貰っている杉元を見てAは笑う
…アシリパさん、嬉しそうだな…
アシリパが杉元に抱く気持ちに何となく気づき思わず頬が緩む
日が落ち食事が出来た
サクラマスにフキノトウの茎、フキとギョウジャニンニクが入った春に食べる汁物で1番美味しいイチャニウのオハウ
鍋でたぎるそれはとても良い香りで食欲をそそる
「「『頂きます』」」
「ヒンナヒンナ」
「美味い！辛かったプクサがすげー甘くなってる」
「長い冬を乾燥した食材で乗り越えたからどのコタンでも新鮮な青物が食べられるのがとても嬉しい時期なんだよな」
「フキもほろ苦いけど美味い」
「甘くてほろ苦い春の味だ」
アシリパは幸せそうに笑った
春の味を堪能した食事が終わればアシリパは眠りについてしまった
『フフ、かわいいなぁ』
アシリパの寝顔を見ながらAは帽子を脱ぎ、髪をとき始める
「Aちゃんの髪綺麗だよなぁ」
『いつも帽子の中に入れとるけんね』
「触ってもいいか？」
『え？…あぁ、良いぞ』
キロランケがサラッと聞いてきた為、思わず頷いてしまった
少し緊張しながら髪を触るのを感じていると目の前に座る杉元と白石がニヤけていた
『何見てんだ』
「い、いや別に〜」
「キロちゃんだけ良いなぁと思って〜」
「うん、サラサラで本当に綺麗だな」
『…っ…』
Aは言われ慣れない言葉に少し顔を伏せた
「Aちゃん本当照れたら可愛いよねえ」
「本当女の子みたいだよなぁ」
「いつも可愛いじゃないか」
『辞めてくれ…。あと杉元、私は女だ』
少し赤い頬を手で覆いながら、杉元を睨んだ
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作者名：げん | 作成日時：2022年11月3日 17時
