二 ページ3
side.S
博学多才、温和怜悧。
僕の幼馴染にはそういった言葉がよく似合う。
どんな時でも余裕を持っていて、
柔和で温厚な態度。
Aは相手を許すことが上手かった。
その優しさには本当に際限が無くて、
こっちが心配になるくらい。
その上彼は、僕以上に頭が切れる。
これは今でも断言出来ることだ。
彼はいつも、
本当に腹に据えかねることが起きないよう、
巧みな予防線を手配している。
僕も最初は、ただAが軟弱で気弱だから
言いたいことを言えずに我慢しているのだろうと
思っていたけれど、それは間違いだった。
幼少からその片鱗は見えていた。
例えば、友人におやつを奪われた時。
Aは快くそれを許したが、
強奪を良く思わない者から
「奪うなんて酷い」と相手が非難されたら、
「僕が羊羹を苦手だから食べてくれたんだよ」
と言って、奪った子を擁護した。
Aが羊羹を苦手なのは紛れもない事実だけど、
そんな"偶然"を僕は見逃さなかった。
僕はAのことが不思議でしょうがなくて、
その頃ちょうど、彼にべったりと
監視するが如くついて回る癖がついていた。
だから、気付いた。
彼はその奪った子と話す前日に、
母親に買ってもらうおやつを羊羹に指定していた。
僕は以前、Aが羊羹を食べたときに
顔を顰めていたのを見た。
だからその光景が不思議だったけど、
母親はそれに何の疑念も抱かず承諾した。
後で本人に聞いた話によれば、
彼はこういうときに備えて、母親に
羊羹が苦手なことを教えていないらしい。
勿論、母親とその羊羹を買うのだって
丁度前日になるよう計算して、
おやつを消費していたのだろう。
「あれ……じゃあなんで僕の前では顔を顰めたの？」
「ははっ、そりゃあ決まってるでしょ。"そういう時"以外は、よく一緒にいる君に食べてもらうためさ」
なんて、Aが悪戯っぽく笑っていたのを
今でも鮮明に覚えている。
これを幼少期から
平然とやってのけていたのだから、恐ろしい。
注意深く見れば見るほど、
Aの施す伏線には一切の拠れが無い。
何十、何百手と先手を打たれていて、
あまりに精巧で自然だから、
誰もそれに気付かない。
だから憧れた。
人が罪を犯す前に、
それを罪で無くしてしまうAに。
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m - コメント失礼します。題名と内容が本当に綺麗に収まっていて、とっても感動しました。読んでいてると、いつの間にかお話に入り込んでしまうような、綺麗な文章と構成に本当に尊敬します。いつか、作者様が明るい気持ちでこちらへ帰ってきてくださることを願います。 (8月16日 23時) (
レス) id: 682a324aa4 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 涙ドバドバ…大好きですもう…。主様のスピードで大丈夫です。いつでも待ってます。 (5月22日 22時) (レス) @page16 id: fdfca7d6d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっつ。(プロフ) - すっっっごく気になる所で終わっている...ゆっくりでもいいので続き待ってます...！！ (2023年3月21日 1時) (レス) @page16 id: f68b2b1abd (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - すごく好きな作品です……！ 更新待ってます！ どうか無理せずに頑張ってください (2022年12月8日 0時) (レス) @page16 id: 5abadf1a2d (このIDを非表示/違反報告)
ゆずポン美味しい - これを見るのが毎日の日課じゃぁああ！…あｯすみません！更新楽しみにしてます！頑張ってください！ (2022年8月12日 2時) (レス) id: 3d7d623247 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Re: | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2022年7月25日 19時
