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ごめんなさいと謝りながらベッドの横の椅子へ腰を下ろし、彼に話しかける。
「明日の朝はしじみのお味噌汁?」
「あーそれで頼む...くっそ、もうしばらく混合酒は飲みたくねえ...」
「そっか、...それは残念」
私の言葉に訝しげな視線を寄越す中也くんの目前へ、今日ボスから貰ったそれを掲げる。
「これって、」
「マティーニ...ジンとベルモットから作られる混合酒だね」
業務が終わり医務室に戻ったら机の上にボスからの書き置きと共にこれがあったのだと説明すれば、彼は納得したように頷く。
「お前の好きなやつだっけか、それ」
「うん、...ほんとは今日一緒に飲もうと思ってたんだけど、中也くんしばらく混合酒は飲みたくないみたいだから後で黒蜥蜴のみんなにでもあげてくるよ」
「何でだよ、お前1人で飲めば良いじゃねえか」
「...だって、」
中也くんと飲まないと楽しくないし、とぽつりと言えば、たちまち彼の瞳は大きく見開かれていく。
「私はあなたと違ってお酒そのものが好きなわけじゃないから、中也くんと飲めないならべつに飲まなくて良い...って、」
何故彼は手を目に当て天井を見上げているのだろう。
お前さあ、ほんとさあとブツブツと呟きながら上を仰ぎ見る彼の姿は中々に不気味だ。
私がそんな彼にちょっと引いていると、パッと瓶が手から攫われた。
「...そんなこと言われたら飲むしかねえだろ...ほら、グラス持って来いよ」
甘さを含んだその声に抗う術もなく、私は彼に酔わされる___
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作者名:朔麻 | 作成日時:2019年5月26日 23時