RED.7 ページ8
それからしばらくして、私の目は元に戻った。これ以上私の好奇心を刺激しないためだろう。全くもって余計なお世話。とはいえ、この男は私の欲しい物ばかり与えてくれる。文句は言えない。
｢また見せてくれる？綺麗な色｣
｢お前の絵は、その目で見た世界だからこそ美しい。……だが、無償で絵が見れるんだ。そのくらいのことはしてやるさ｣
そのくらい、とは言ってくれる。魔法とやらは随分容易く使えるらしい。私にとって、いや、色覚異常者にとって正常など存在しない。彼らが正常で私たちが異常、そんな表現に納得できないでいる。この世界に絶対など存在しないと私は思う。
だから、魔法だってなんだって信じられるよ。クロロが私に、私の知らない世界を教えてくれただけだって。クロロが私に手を伸ばす。嗚呼、攫われてしまうのか。
｢……連れてく前に教えてよ。
貴方にとって、私の絵って一体なに？｣
多くの人間が金にものを言わせて私の作品を買っていく。そこに意味は無く、ブランド品と同じ扱い。だけど、クロロはここまでした。私の絵に、この人は何を見出したんだろう。黒い瞳を見つめる。結ばれていたクロロの口が、ゆっくり開いた。
｢初めて見た時に感じたのは、嘆きだった。どの絵からも何かしらの欠損を感じ、それを嘆いてるような｣
｢人間は悲劇を好むって言うけど、貴方もその口？｣
｢悲劇を好んでるのはお前の方じゃないのか？｣
｢まさか。ハッピーエンドは大好きだよ｣
｢芸術にはその人間の人生が描かれる。お前を調べていくうちに興味が湧いた。お前という人間がどんなものであるのか｣
芸術は感じるものだ。正解なんて無い。クロロにとって私の芸術が嘆きだと言うのなら、それでいい。そこに私は否定も肯定もしない。ただ、彼はそこから私を見つけた。嘆きと私は密接に関係していると彼は思っているのだろう。
ならば私は否定せねばならない。
私の作品をどう感じようと個人の自由だが、私自身のこととなれば話は別だ。私は色覚異常であることを嘆いてなどいないのだから。棘のない薔薇が薔薇とは言えないように、色覚異常じゃない私は私ではないのだ。
色覚異常だって、私を構成する要素の一つだから。
｢なら、私のことを存分に知ればいい。私の作品から私を感じとって見せてよ。その口に言わせてあげる。今の私が、完成品だって｣
｢俺は今のお前がいいんだがな｣
｢周りの言う"私"と、私の考える"私"は違うの｣
私は私で、作品も私。
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まどろみ(プロフ) - あかあお、、みどり？？さん» 確かに！色じゃなくて光の三原色でした<(_ _)>わざわざありがとうございます！直します！ (2019年4月2日 22時) (
レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
あかあお、、みどり？？ - 色の三原色って赤、青、黄じゃなかったですか？ (2019年3月31日 19時) (レス) id: 8b40cac6e3 (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - mikki-さん» あー！ありがとうございますっ！もっと上手に書けるよう今後も精進します(><) (2019年3月29日 21時) (レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - このどこか飄々として読めない夢主が好きです！幻影旅団も好きです！！その他にも文の書き方とか全てが好きです！頑張ってくださいね！ (2019年3月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどろみ | 作成日時：2019年3月26日 23時
