PURPLE.6 ページ14
__私のことはパクと呼んで頂戴。
そう言って、彼女が私の隣に座る。急な至近距離に血液がブワッと皮膚を焼いた。その落ち着き払った笑みは、どこか"あの人"のようだ。まぁ、もうどこにいるかも分からないが。
｢A、どうかした？｣
｢いえ、何でも｣
にっこり笑って蓋をした。人間の脳は馬鹿だから、こうして笑えば自然と感情さえ偽れる。隣に座るパクノダ……いや、パクさんは"あの人"ではないのだ。今はそれを喜ぼう。しかし、いづれは"あの人"を探すこともしなければならない。
クロロには言えなかったが、
結果として自由の身になれたのだから。
｢この葡萄、すごく甘いでしょう？｣
隣から楽しげな声がする。一粒くちに含みながらそう言ったパクさんは、正面を見ていた。ノブナガは一番端の席にいる。今のは私に向けた言葉だろうか。いや、きっとそうだ。
｢甘いです｣
｢ええ。それに皮まで美味しい｣
｢皮ごと食べられるものっていいですよね｣
｢香りも強いのよ｣
｢高そうな葡萄ですねぇ、改めて｣
｢いくらかしら？葡萄の相場が分からないわ｣
｢すみません、私も知らないです｣
｢同じね。なら、食べちゃいましょう｣
葡萄について駄べりながら、ただ目の前のフルーツに手を伸ばす。本当に美味しい葡萄だ。一粒もノブナガさんに渡さないのが可哀想になるほどに。残念ながら彼は爆睡中で、起こすのも忍びない。
｢葡萄が紫って、それが全てじゃないのよ｣
残り数粒。
お互い交互に手を伸ばした。
｢たしかに｣
｢味や匂い、食感だって葡萄にはあるものね｣
私が一粒とり、食べて噛んで飲み込んで。そうしてようやく、最後の一粒をパクさんが手に取った。彼女の手入れされた美しい手が、青色の葡萄を持ったまま私の方へ向けられる。そして、ピトッと唇に冷たい感覚。
｢私も貴方も、これを美味しいと思ってる。違うところばかりに目がいって、同じところを見落としては勿体ないわ｣
口の中へ押し込まれた青。最後の最後で私に一粒くれた彼女は、頬杖をつきながら私が咀嚼しているのを見ていた。｢美味しい？｣そう聞かれているようだった。私が食べ終えると、彼女は静かに立ち上がる。
｢さて、そろそろ寝ましょうか｣
｢ノブナガはいいんですか？あのままで｣
｢いいのよ。いつもの事だから｣
歩き出す彼女の足を一言かけ止めさせる。言わなければならないことを一つ思い出したのだ。
｢私も、美味しいと思いました｣
｢同じね｣と笑った。
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まどろみ(プロフ) - あかあお、、みどり？？さん» 確かに！色じゃなくて光の三原色でした<(_ _)>わざわざありがとうございます！直します！ (2019年4月2日 22時) (
レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
あかあお、、みどり？？ - 色の三原色って赤、青、黄じゃなかったですか？ (2019年3月31日 19時) (レス) id: 8b40cac6e3 (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - mikki-さん» あー！ありがとうございますっ！もっと上手に書けるよう今後も精進します(><) (2019年3月29日 21時) (レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - このどこか飄々として読めない夢主が好きです！幻影旅団も好きです！！その他にも文の書き方とか全てが好きです！頑張ってくださいね！ (2019年3月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどろみ | 作成日時：2019年3月26日 23時
