サラダにトマトを添えて (ページ7)

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□きっかけは突然に＃2 ページ7

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『えぇ、できればそれは避けたい』

「なんの手違いか分からないけど、とりあえず今あんたの手元にあるんだから、直接返すのが普通でしょ」

『……たしかに』

自分の教科書が違う人の手元にあるって、ちょっと嫌かもしれない。友達ならいいけれど、話したことのないクラスメイトが持っているとか気まずいことこの上ない。

明日の朝返すかぁ、と決意を固めると友達はそれと、と話を繋げた。

「お詫びに何か買ってけば？」

『お菓子とか？』

「そ、わざとじゃなくても相手に迷惑かけてるんだからそのくらいしな」

『そうだよね、わかった。で、京本くんは何が好きなの？』

「知らん」

知らねーのかよ！と思わず電話越しにつっこんでしまった。だって今の知ってるっていう感じだったじゃん！

でもよくよく考えれば、友達が京本くんと話しているところを見たことがない。となると、好物を知らないのも当然か。

『なにが好きなんだろう……』

「樹に聞けば？」

『そういえば、あの二人友達か』

隣のクラスにいる田中樹。去年同じクラスで、わりと仲が良かった。フレンドリーでコミュ力おばけの彼からすれば、私なんて数多くいる友達のうちの一人なんだろうけど。

京本くんとも友達で、昼休みになるとうちのクラスによく遊びに来る。あいつなら、京本くんの好きな食べ物くらい知っているだろう。

『連絡してみる』

「おー、そうしな」

『うん、ありがとう』

お礼を言い、電話を切った。そして樹の連絡先を探し、トーク画面を開く。

聞きたいことあるんだけど

樹珍しいじゃん、どうしたの

京本くんって、好きな食べ物ある?

樹きょも?トマト好きだけど

じゃあトマトジュース飲むのかな

樹よく飲んでるよ

おっけ、ありがとう

なんで私がそんなこと聞いたのか、追求してこないのが逆に怖い。普通なんでって思うのに。

でも、京本くんの好きなもの聞けたからいいや。お菓子じゃなくてジュースだったけど。まぁそれで充分だろう。

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