私は全力で中也の片思いの邪魔をする弐【文スト】【中原中也】 (ページ8)

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突然のデレページ8

「ただいま」

って、この時間じゃ流石にAちゃんも寝てるよね。

「治……ッ！」

「！」

扉を開けた瞬間、Aちゃんが抱きついてきた。

「急に飛び込んだら危ないよ。Aちゃん。どうかした？」

「どうも、しない……」

(何があったのか話したくないのかな)

まあ、いいや。Aちゃんはなかなか離してくれない。

「姉さん？離してくれなきゃ動けないんだけど……」

「治、…遅い。どこ、行ってたの」

こうやって抱きついてきて、涙の溜まった目で上目遣いをする辺り、何も思っていないのか計算なのか。どちらにせよたちが悪い。

「……もしかして、淋しかったの？」

「……………………」

Aちゃんは無言で頷いた。

これはヤバい。本当、駄目だ。私は咄嗟に上を向いた。

「……治？」

顔が熱い。きっと赤くなっている。

「ごめ、ちょっと待って」

こんな赤い顔見せられない。

我が姉ながら可愛い。きっとこの可愛さがあれば、世界が救える。この人がいれば、怖いものなんてない。

この気持ちなら、織田作だってわかるかもしれない。あいつだって子供達の笑顔の為に動いているんだから。

「遅くなってごめんね」

少し顔の赤みが引いた気がする。そう思った私はAちゃんの頭に手を乗せた。そして、目を見て云った。

「ただいま、姉さん」

「おかえり、治さん」

すると姉さんは、同じように私を見つめて涙のいっぱい溜まった目を細めて笑った。

きっと姉さんは眠いのだ。眠いと甘えん坊になってしまうのだ。

眠かった、淋しかった、それだけじゃない。

今日出かけた時に何かあったのかもしれない。けど、姉さんが自分から話してくれるまで私は待つことにした。