銀色の災いは炎の人に恋をする (ページ7)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:9,101 hit

瞳の奥ページ7

彼が、…エースが私の弟になっていく日かが過ぎた。

あんなにお父様の首を討ち取ろうと躍起になっていたエースは今じゃ「親父、親父」とお父様について回る甘えん坊さんになっていて、少し新しい一面を見つけたみたいで私は密かに得意になっていた。

その甘えん坊が、今、私の顔を正面から覗きこんでいる。
正直言って、かなり近い。下手すればキスできるんじゃない？ってくらいには近い。やばい。
やばいくらいに、心臓が鳴いている。

『なんなんですか、エース。近いですよ』
「んー…やっぱ、お前綺麗だなって思って」
『はぁ？意味がわかりません。』
「いやだから、A、綺麗だなって言ってんだ」

だから、それが意味がわからないと言ってるんだ。
弟は、もっと見せてくれよ！と私の顎を持ち上げて様々な角度から覗きこみはじめた。

「うん、やっぱ、綺麗だ。特に目が……あれ？」

エースは私の目を覗いて首を傾げた。
私はびくりと体を震わせる

「なぁ…A。この、目の奥にあるマークみたいなやつは、な…ンッ⁉」

彼の語尾が変な呻き声に変わったのは、私が彼を軽く殴ったから。
いってぇぇ！！！とエースがひっくり返った。

「何すんだよ！」
『レディに対して失礼が過ぎますよ、エース。瞳をジロジロ覗きこむなんて、悪趣味です』

何やら喚いているエースを残して、私は船内に入る。

彼が見つけた印…それがある左目をそっと抑えると自然に顔が歪んだ。

これに、いい思い出なんか一つもない