5番ブースの恋 【Ryuto S】

Story 31 * ryuto ページ31

.




先生が挙動不審なことは少なくないけど、最近は特になんか、様子がおかしい。


たーまに、上の空だし。


顔を赤くしたり、青くしたり、忙しい。




『…はい、じゃあここで終わりで』


「ありがとうございました」




筆記用具、教科書、参考書を片付けて鞄を持つ。


今日こそは、先生に何があったのか、聞こう、と意気込んだ。




「あの！先生、」


『……うわ、』




うわ、と小さく声を上げた先生の視線の先を辿ると、外はバケツをひっくり返したような雨が降っていた。


…折り畳み傘、機能するかな、と不安が募る。




『すごい雨だね、龍斗くんもお迎え来てる？』


「いや、歩きです」




今日、お母さん夜勤だし、お父さんは出張で家を空けている。


さすがに雨の中い自転車で来るの嫌だったし。




『歩き！？この雨の中？！』


「そう、ですけど…」




すると、先生が考え込むようにうーん、と唸った。


風邪ひかせるわけにはいかないもんね、と自分に言い聞かせるように言ったあと、俺の方に視線を向けた。


今更だけど、先生と立って会話すると、だいぶ見上げられるから、心臓が煩くなって仕方ない。




『今日、車で来たから乗ってく？』


「へ、」


『あ、その、運転、全然しないから命の保証は……いや、ちゃんょ免許は取ってるんだけどね？！』




風邪ひかせる、交通事故に合わせるか…？あれ、風邪ひかせる方がマシ？！と頭を抱える先生。


その様子が面白くて、思わず吹き出した。




「先生、風邪ひきたくないんで、お願いしてもいいですか？できれば、交通事故にも合いたくないですけど」




だって、こんなチャンス二度と無い。




.

Story 32→←Story 30

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す