163...Side You ページ29
Side You
体が熱くて火が出そう。
頭の中のいろんな感情を総動員して考えてみたけど、パニックが深まる一方。
どうしよう、どうしよう、どうしたらいい…？
.
すると不意に左のほっぺに感じた大きくて温かい手。
反射的に顔を上げたら、見たことないような翔ちゃんがいた。
その瞳の黒さは深さを増してるように見えたし
薄っすらと開かれた唇には、無条件に“触れたい”と思うような力があるように感じた。
スッとした鼻筋にさえ、グッと胸を締め付けられて
普段はそんなに意識しない首筋も、鎖骨も、全部が甘い鼓動を速める原因になってしまうみたい。
目を離せないままでいたら、スルスルと頬を撫でられた。
そんなことで簡単に、私の体温はまたグンと上がる。
.
翔「……怖く、ないから。」
「…」
翔「…全部、俺に預けて…」
「…」
翔「…Aの全部、ちょうだい…？」
.
私は、この人にしか“好き”っていう感情を抱いたことが無い。
こんなに好きで、好きで、好きで…
たぶん、普通の人が一生のうち何人かに捧げるこの気持ちの全部を、私はこの人一人に使ってしまうんだ。
.
…全部全部、翔ちゃんがいい。
隣にいるのも
手を繋がれるのも
抱き締められるのも
キスされるのも
…抱かれるのも。
きっと私は、この人に愛されながら大人になっていく。
それが私の運命なのかもしれない。
.
「…しょう、ちゃん」
あまりに自分の声が掠れていて、恥ずかしい。
それでも、ん？って。
私の声に丁寧に耳を傾けて。
左頬の右手に加えて、大きな左手が私の右頬を包む。
その温かさでさえ、心臓が壊れるんじゃないかと思うほどのドキドキに繋がる。
「…今までも、…これからも」
翔「…ん」
「翔ちゃんだけが…大好きだから」
翔「…」
「だから…」
翔「……だから…？」
クイッと優しく私の顎を持ち上げる。
視線の先の長い睫毛が、甘い。
.
「…“はじめて”は…翔ちゃんが、いい…」
.
あまりに胸が苦しくて、ギュッと目を瞑った。
真っ暗な視界のままで感じたのは、今までで一番の、壊れそうなくらいに優しい唇の温度。
ゆっくり目を開けたら、フッと笑うその眼。
.
.
翔「…ベッド、行こうか…」
.
.
そう言って私を抱き上げた彼は、王子様にしか見えなかった。
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作者名：ぽろ
| 作成日時：2016年9月28日 3時
