物理講義室の恋 ( yb×in )

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「おいおい、だいじょーぶ？」

「す、みませ、いたた....」



タンコブとか出来てない？と、窓の枠に凭れながら俺を覗き込んでくる白衣を着たこの人。





‥やぶ先生、だ。


カッコよくて愛嬌があって、すごい人気のある物理の先生。確か、サッカー部の顧問だっけ。



1年生は物理の授業がないから関わりはなかったけど、彼の噂はこの学校にいれば必ず耳に入ってきていた。





遠い存在の彼を初めて間近で見て、さっきまでの自分の失態に恥ずかしくて顔から火が出そうだった。







俺の足元で猫ちゃんがにゃあと鳴く。



「おうクロ、昼寝してたのか？」


クロ。


「クロ......。」

「ああ。俺がつけたの。真っ黒でツヤツヤの綺麗な毛並みしてるからさ、似合うだろ？それに、誰に飼われても馴染みやすいように、な。」

「....うん、似合ってる。」



自分と全く考えが同じだった彼に、なんだか頬が緩んでしまう。頰を隠すようにしゃがんで、足元にいるクロの喉を撫でた。





「.....お前、まだ学校いんの？」

「、え？は、はい」



突然投げかけられた言葉に、思わず顔を上げた。窓枠に凭れかかったままの彼と目が合う。






「ん、じゃあ、物理講義室おいで。もう寒くなるし、茶でも出してやる」




驚いて返事がすぐに出なかった俺に、クロも一緒にな、と付け加えて、ぴしゃりと窓を閉めた。




もう遅いから帰れ、って言われると思ったのに。



もう夕日はだいぶ傾いていて、陽の当たる部分は少なくなってしまった校舎裏で立ち尽くす。







校舎に猫を連れ込むという罪悪感と、初めて行く物理講義室、初めて話すやぶ先生。




たくさんのドキドキを抱えて、俺はクロと北校舎に入った。





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